第9章 蒼炎を悔悟する※轟焦凍
ヒーロー仮免に合格して、粛々と日々を過ごしていく。
本当にただ、粛々と。
あんな衝動が自分を襲ったなんて、忘れてしまいそうに。
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『アレはもう、俺じゃ制御出来ない。』
ゆらの同行を任せた同僚から、ホークスに連絡が入った。
話によると、別にゆらは何か問題を起こした訳ではない。
ただ、淡々と業務をこなして、自身のモチベーションを仮免まで持っていき、仮免には合格した様だ。
驚異的な成長をしたのが、荼毘と出会った衝動が源だったとしても。
ホークスは電話を切ると、ため息を吐いた。
次のイベントは、インターンだ。
ゆらを自分の事務所に呼ぼうか。
来ない気もするし、来るかもしれない。
もう、ホークスを追っていたゆらは居ない。
いや、辞めておこう、自分との接点はなるべく避けた方がいい。
2人が知り合いだと、世間にバレない方が、後々仕事がし易い。
本当に手のかかる後輩だ…。
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「秤。」
噂で、轟と爆豪が仮免に落ちたと聞いた。
呼びかけてきた轟は、心なしか、少ししょんぼりしている様に思う。
「……ご愁傷様です…。」
言葉を間違えた様だ。
余計、轟が落ち込んだ。
轟は目を逸らしながら、何か言いづらそうだ。
「……大丈夫?」
「……追加試験があるから…。」
なら、轟なら大丈夫だろう。
少し。
ほんの少し、スタートが遅れただけだ。
ソレが轟の様な人には、とてももどかしいだろうが。
「……縛ってあげようか?」
ゆらは轟を横目で見ながら、聞いた。
『ソレで喜ぶの秤だけだから。』
いつもの様にそう言って、引いた顔をして欲しい。