第22章 東京合宿 ”安定” と ”進化”
「あ!あぶない!」
スパイク体勢に入った日向くんと旭先輩がぶつかった。
そこから一気にチーム内の空気がおかしくなる。
「なんか・・・空気変わりましたか?」
「うん・・・さっき日向と東峰がぶつかったあとから、全員に緊張感が走ってる・・・」
ギクシャクした空気のまま試合が終わった。
「(そろそろ次の試合始まる・・・)」
日向くんたちは外に行ったまま、まだ帰って来ない。
「外の3人呼びに行ってきます!」
入口まで来たところで影山くんと菅原先輩、日向くんの会話が聞こえてきた。
「おれ、目瞑んのやめる!今のままじゃだめだ。
おれが打たせてもらう速攻じゃだめだ。・・・空中での最後の一瞬まで自分で戦いたい」
「あの速攻はお前の最大の武器だ。そんであの速攻にとって
”ほんの少しのズレ”は”致命的なズレ”になる。あの速攻にお前の意思は必要ない」
冷静な、落ち着いた声色から影山くんは感情的に言ってるんじゃないって分かる。
いまの状況を分析して考えたことを伝えてるんだ。
「俺も・・・今影山の意見聞いてたら今回は影山の言うこと正しいと思ったよ」
影山くんたちの言っていることなんとなく分かる。バレーを知っているからこその結論なんだろう。だから正しいんだと思う。
でも・・・日向くんの言ってることも分かる。
今のままじゃダメだって感じたなら、それも正しいんだと思う。
「(日向くん・・・)」
声かけるタイミングを逃して動けなくなってしまった。
同じく3人を呼びに来た烏養コーチが「俺が行くから」と肩を叩く。
「あー・・俺も菅原達の意見に賛成だな」
複雑な表情をした日向くんが体育館に入ってきた。
一瞬目が合ったけどすぐそらされる。
悔しそうな、納得してない表情。
次の試合から日向くんに変わり成田先輩が入る。
この日、日向くんはもうコートに立たなかった。