第19章 東京への試練
テスト前の貴重な土曜日。2年生たちは部活終わりに田中先輩の家に集まって勉強会をするらしい。
「(来週からテスト始まるし、最後の追い込みで私たちもやっておいたほうがいいかな・・?)」
チラリと日向くんたちを見ると向こうもこっちを見た。
「私たちも土曜に勉強会する?うちでよければ・・・」
「「ぜひお願いします!」」
日向くんと影山くんがものすごい勢いで頭を下げる。月島くんと山口くんの強制参加も決まった。
土曜部活終わり、4人は一ノ瀬の家に向かう。一ノ瀬は先に戻っている。
道順はいつも山口と分かれる道をひたすら真っすぐで大丈夫、と教えられていた。
「お邪魔するのに手土産って常識デショ?」
「え・・そうなの?」お前持ってきた?と影山に聞くと首を横に振る。
「みんなからって事にしよう?」
山口が手に持った紙袋を持ち上げる。月島と山口で用意したものだ。
「山口、こいつらのことあんまり甘やかすなよ」
「オイ!」
急に怒鳴り声が響く。
「道に広がって歩くな!あぶねーだろう!」
後ろからトラクターが迫ってきた。すれ違いざま熊みたいに体の大きいじいさんが怒鳴る。
4人はトラクターが通り過ぎるまで道の端に寄った。
「おれクマかと思った・・・」
「デカいじいさんだったな」
「・・・怖かったよ」
「僕はちゃんと端っこ歩いてたのに・・・」
道の突き当たりに見えてきた家の前で一ノ瀬が大きく手を振った
通されたのは風の良く抜ける、居心地よさそうな居間。
縁側の涼しそうなところでは猫が寝ているし、庭に干してある洗濯物が夏の日差しの中で風に揺れていた
「猫飼ってるんだ!」
「ううん、うちじゃなくて近所の猫だよ。政宗っていうの」
一ノ瀬が声をかけるとしっぽを軽くあげた。よく見ると片目に傷がある。
「片目怪我してる」
影山がそっと縁側に近づく。政宗が気配にビクリとした。
「子猫の時にケンカしたみたい。・・なんで”政宗”か分かる?」
「独眼竜 伊達政宗!」
日向が嬉しそうに答えた
「正解!そこから名前考えたみたい。愚門だったね」
「「グモンてなに?」」
「愚かな質問。また自らの問をへりくだって言う言葉!!!ついこの前やった!!」
勉強が始まってしばらくすると、どこからか美味しそうなニオイが漂ってくる。
ぐぅううう・・
みんなのお腹が盛大に鳴る。集中力は一気に切れた