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約束の景色

第14章 決意


仙台市体育館前で嶋田さんと別れた。
配達に向かう車を見えなくなるまで手を振って見送る

「(これ以上知り合いに見つからないようにしないと!)」
そういう時こそ会ってしまうもの

「「あっ」」
「えっ?」

大王様と岩泉さんが階段から降りてきた。
普通であれば授業を受けている時間帯。気まずい空気が流れる。
「し、失礼します!」
ぺこりとお辞儀をして急いで2階席に駆け上がる。
きっと一瞬だったから私って気づかなかったかもしれない!?そう思っておこう

コートに出た及川たちは観客席にいる一ノ瀬を探す。
「なんかね・・・。来てるんだって分かったら意識しなくても探しちゃうというか、むしろ目に入っちゃうっていうか」
「また落ちそうなくらい手すりに乗り出してたら?って考えたら、まずは場所確認しときたくなるよな」
そんな風に自分たちを応援する姿を見れないのは知っているが。
試合前に二人はそんな事を言って苦笑いしていた

男子決勝 青葉城西高校vs白鳥沢学園
白鳥沢学園には及川徹の因縁の相手
超高校級エース『牛島若利』がいる

決勝戦ともなると両チームの応援団の熱も凄い。
会場の上の方、コート全体を見渡せる位置に居ても応援団の熱気が伝わってくる。
昨日戦ったから分かるが、やはり青葉城西は強い。
大王様のサーブもトスも、岩泉さんの力強いスパイクも。
それなのに・・・
青葉城西はストレートで負けた。
白鳥沢の牛島さんは放つ気迫、スパイクの威力、すべてが圧巻だった。
どんな壁も壊して、力尽くで点を奪っていく。
全部力でへし折って行く。
決して大王様たちが弱かったわけではないのに。
コートを後にする大王様と岩泉さんの表情は険しかった。
試合後はとてもじゃないが声をかけられる雰囲気ではない。
”負けたくなかった” ”絶対勝ちたかった” そんな想いが痛いくらい溢れ出していたから

ロッカーへ移動していく二人を遠くから見てた。
視線に気付いた大王様たちがこちらを振り向く。
丁寧にお辞儀してその場を去ろうとすると・・・
「はちちゃん!」
大王様に呼び止められた。
「先に行ってるぞ」
岩泉さんの声が通路に響く。

駆け寄ってきた大王様はいつもとは違う顔だった。
整った顔は悔しさでいっぱいだったし、目は赤くなっていた。
いつもの余裕なんてこれっぽっちもなさそうで。
目の前に静かに立っている
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