第14章 決意
「(つい呼び止めちゃったけど俺なにしたかったんだ・・?
俺たちがここから引きずり落した相手校の子なのに)」
「あ、あの・・」一ノ瀬の方から声をかけ
「これどうぞ。しっかり体休めてください」
先ほど買ったスポーツドリンクを渡す
「あっ・・・ありがとう」
それでは、と振り向いて帰ろうとした一ノ瀬の肩をグッと掴んだ。
「俺、どうしても・・・
絶対勝ちたかったんだ。あいつを倒したかった!」
声が震えている
「ごめん、君にこんな事言うのは勝手なんだけど。でも・・・悔しい。
すごく悔しい!」
大王様の顔が近づき肩に重さが増す。
誰もいなくなった通路に静かに立ち続けた。
しばらくしてゆっくり顔を上げる。グスッと鼻をすすった。
「ごめん、カッコ悪いとこ見せちゃった。情けないよな・・・」
気まずいのかこちらを見ない。さっきより少しだけ落ち着いた表情
「(その悔しさは知ってます。でも私が感じるよりもコートに立っていた皆さんはもっともっと・・強い思いですよね)」
グッとお腹に力を入れる。
「大王様、今日もすごかったです」
一ノ瀬の力強い声に驚いて顔を見る。
真剣な表情、自分を見つめるまっすぐな瞳。
「お疲れ様でした!」大きな声でそう言うと走っていった。
色々言葉かけて慰めるわけでもなく、黙ってずっと傍にいてくれて最後に一声かけて帰るとか。
優しくて、カッコ良すぎでしょ・・・
それに何あのまっすぐな目!”及川さんなら大丈夫です”って言われた気がしてくるじゃん!
「なんでうちの学校に居てくれなかったのかな・・・。あんな風に傍で応援してもらってる飛雄たちが羨ましいよ。
ってかチビちゃんにはちちゃんまで隣にいるなんて、恵まれすぎてない?飛雄ムカツク!」
パン!と両頬を叩いて気合を入れた。
「このままじゃ終われない。俺だってカッコいいとこ見せたい!」
みんなのところに戻ってきた及川。
「岩ちゃん、俺たちはまだ終わったわけじゃない。次の春高予選で必ずあいつをぶっ倒す!」
「当たり前だ!」
「・・・はちちゃんってさ、すごく美人とかすごく可愛いとか、めちゃくちゃ目立つタイプではないんだけど・・・・本当に良い子だよね」
「今更気づいたのか?お前は女を見た目で選んでばっかだもんな」
だからいつも振られんだよ、とサラッと言う。
「・・・岩ちゃんて本当にヒドイ」