第10章 観察者
青葉城西side
伊達工業と烏野の様子を見に、及川と岩泉が観客席にやってきた。
勝ち上がってきたどちらかが明日自分たちと戦う相手になる。
「あれ?あそこにいるのはちちゃんじゃない?」
及川が指差す先にいるのは烏野のマネージャー。
「はち?あのマネージャーそんな名前だったか?」
「元気で一生懸命で可愛いし、烏野大好きです!って溢れてるし。なんか忠犬ハチ公っぽいでしょ?だから”はちちゃん“」
そう言って及川は一ノ瀬のほうに歩いていく。
「久しぶりはちちゃん」
「大王様!・・はちちゃんってなんですか??」
不思議そうな顔をしてる一ノ瀬に、先ほど岩泉にした説明を繰り返す。
二人が揃ってから「この前は練習試合ありがとうございました」
と一礼。礼儀正しいやつだなと岩泉は思った。
「どうだった?こないだの俺のサーブ。及川さんの魅力に気づいちゃった?」
先日の練習試合を思い出したのか、うーんと難しい表情をした。
「すごかったです・・・。
最初見た時バレーのことまだよく分からなくて、あれから少しずつ勉強して気付きました。大王様のサーブは本当に凄いんだ!って」
二人は黙る。
「この人はこの1本を打てるようになるために今までどれだけのサーブを打ってきたんだろう?どれだけ練習してきたんだろう?って。
やっぱり及川さんは・・・日向くんが言うように大王様です!!!」
真剣な表情で及川を見る一ノ瀬。
その視線は普段及川を囲む女子たちのそれとはまったく違う、
純粋な尊敬。
「(へー。女と話してる時にこういう顔する及川初めて見たな。それにしても・・・この子ちゃんと見てるんだな)」
改めて目の前にいる烏野マネージャーを見た。
黙ってしまった及川たちに気付き「バレーボール初心者なのに生意気なこと言ってすみませんでした!」と急いで謝る。
「(普段キャーキャー言われて、見た目のことでもてはやされて、
カッコつけて王子様を気取ってきた。こんなに真っ正面から向き合う子になんて出会ったことないよ)
はちちゃんって本当・・・。困ったなぁ。俺がこんな風になっちゃうなんて」
「謝らなくていいぞ。こいつは女にキャーキャー言われることに全てをかけてるクソ及川だからな。
それにしても一ノ瀬はいいやつだな。変なやつに騙されないか心配になるよ」
こいつみたいな、と横を指さす
