第10章 観察者
俺が何も言えなくなったのを見てフォローしてくれた岩ちゃん
ありがたい。でもそれ悪口!
あと岩ちゃんがはちちゃんのこと急に名前で呼び出したのは引っ掛かる!今まで烏野のマネージャーって言ってたじゃん。女の子とそんな優しい顔して喋っちゃって!
しばらくするとウォームアップが始まり、手すりから落ちそうなほど身を乗り出し応援する一ノ瀬
それを見て慌てて止める二人。
「はちちゃん!そこまで応援してもらえてチームメイトは嬉しいけど、心配でアップに集中出来なくなっちゃう!」
「もうちょっと落ち着け!まず座れ!なっ?」
ジャージを掴んで落ちないように支える
「こらー!さっき言ったばかりだろう!応援は嬉しいが頼むから落ちるなよ!」
遠くから澤村が叫ぶ。
その声に反応して一気に大人しくなる一ノ瀬
「す、すみません・・・」
「一ノ瀬がすみません!!!」と及川たちにも謝る
「みな!いいぞ!お前の熱い応援、俺たちにバッチリ届いてるからなー!」
西谷と日向が大きく手を挙げた
「こんな元気いっぱいの子初めてだよ!まさか女の子のジャージ掴んで引っ張る日が来るなんて」
「本当に犬みたいなやつだな。一ノ瀬って面白いやつ」
楽しそうに笑う二人
烏野側の応援に町内会の人が来て、これなら安心して離れられるとホッとする。
「この子応援に熱が入ると身を乗り出しちゃうんで、注意してあげてください」
「しっかり座って見るんだよ?今度会った時に“実はあの後骨折して入院しちゃいました”なんて事になってたら怒るからね?」
二人はポンと一ノ瀬の頭を撫でて去って行った。
「一ノ瀬ちゃんの保護者がどの高校にもいるんだな。
烏養からも”一人にすると心配だからなるべく早く会場にきてくれ”って連絡きたよ」と笑われている声が聞こえてくる。
「お恥ずかしいです・・」
いまどんな顔で謝っているか想像できて、つい笑ってしまう
自分たちの初戦に向けて移動する。
「及川、あの子には軽い気持ちでちょっかい出すなよ?」
「なに岩ちゃん。それってどういう意味?」
「さぁな」
「・・・・はちちゃんは俺が狙うから手を出すなってこと?」
及川の問いにニヤッと笑って先を歩く岩泉
「ちょっと待って待って!
何その怖い笑顔!岩ちゃんって宣戦布告するタイプだった??」
慌てて後を追う及川