第10章 観察者
及川side
烏野の試合を見に来た。勝ち上がってきたら当たる相手。
公式戦で叩き潰したいクソ可愛い後輩がいる高校
会場で見かけた烏野の1年生マネージャーちゃん
練習試合で初めて会った時とは雰囲気が変わった事に気づく。
最初は美人マネージャーの隣にいる”ちょっと可愛い子”って印象だったけど・・・
「(あ、笑った)」
烏野のやつらと楽しそうに何かを話していた。その笑顔に驚く。
本当に楽しそうで、嬉しそうで。
「(あんな子だったかな?なんか雰囲気変わった?)」
良く笑うし元気だし、表情もコロコロ変わる。楽しそうに飛んで行ったボール追いかけちゃって、なんか犬っぽくて可愛いな。
よし、”はちちゃん”って名づけよう!
飛雄もチビちゃんも声かけられてなんか楽しそうに話してるし・・・
っていうかボーズ君とか周りに対してずいぶん威嚇してない?
マネージャーのこと見てるやつチラホラいるっぽいしね。
まぁあの子たちの周りには怖そうな番犬もいるから簡単には近づけないだろうけど。
「(本人たちは自分が見られてるなんて全く気づいてなさそうだから・・・苦労しそうだね)」
1回戦 烏野vs常波
「やっほー!トビオちゃん、チビちゃん」
観客席から声をかけると二人がこちらが見上げた。
「元気に変人コンビやってるー?」
げっ、大王様だ!とチビちゃんがオドオドし始める。
「あれっ、リベロがいるねえ。練習試合の時は居なかったのに」
「なんかデカいやつも増えてんな」
横に座わる岩ちゃんが言った。
「烏野ファイトー!」
もうすぐ試合が始まるって時、大きな可愛い声が響いた。
さっきまで硬い表情だった選手たちが上を見て表情を和らげる。
反対側の観客席に大きい声出して恥ずかしかったのか、顔を赤くした
はちちゃんを見つけた。
心細そうだけど一生懸命声を出して応援している。一人でも頑張ってるんだな。
ボーズ君、エースに続いてチビちゃんが飛んだ。
周りで試合を見ていた他校の選手たちが驚いた声をあげる。
うんうん、やっぱりお前たちと戦れるのが楽しみだ。
1回戦は危なげなく勝ちそうだね。このまま2回戦も勝ち上がってきてよ?
”王者”も”ダークホース”も全部食って全国へ行くのは俺たちだ・・・