第74章 春高1日目夜 『気付き』
「お前たちの姿見て、2、3年がどれだけ刺激受けてたか知ってる?
ほら・・・泣くなよ。まだ負けたわけじゃないし、春高終わったわけじゃないだろ?」
「まだ・・・泣いて、ません」
必死に歯を食いしばって堪えてる私を、困ったように見てる。
ゆっくり伸びてきた手がほっぺたをギュッとつまんだ。
「せっかくの可愛い顔が泣いてたらもらったいないだろ?」
目線を合わせるように屈んだスガ先輩の、優しい笑顔が目の前にある
緊張した時、不安になった時に安心させてくれた笑顔
・・・あまりの近さになんだか恥ずかしくなって思わず固まる。
「一ノ瀬にはさ、泣くより笑っててほしいんだ。いまは明日の試合のこと考えよう」
「・・はい」
めそめそしてばかりじゃダメだ
「えっと、そろそろ中はいらないと本当に風邪ひくぞ?」
スガ先輩の背中越しに大地先輩と旭先輩の顔が見えた
「えっ!?なんでお前ら・・」
「スガがなかなか戻ってこないからお迎えに」
「邪魔して悪いな。でもお前ばっかりにいい思いさせるわけにはいかないから」
「・・・なんだよ」
スガ先輩の手がほっぺたから離れた
「一ノ瀬、かなり冷たくなってるぞ?温かい飲み物買ってやるから」
大地先輩と旭先輩に背中を押されて自動販売機に移動した。
「ほら、こっちこっち」
「あのままスガの近くいたら危ないからな~」
「そうそう。今のスガは危ない」
「ハァ?・・ってかお前ら!!どっから見てたんだよ!のぞき見すんな!」
スガ先輩が二人の背中をバシンと叩いた
「俺にも温かい飲み物おごれ!それくらい安いだろ!」
「「スガは自分で買え」」
「なんでだよ!」
「あっ!いたいた。みなちゃん、烏養さんがマネージャーにも動画あるからってくれたの。一緒に見よ」
潔子先輩が笑顔で駆け寄る。
「本当ですか!見ま・・」
「「「俺たちも見る!」」」
「「えっ?」」
3人の力強い声に潔子先輩と二人目を丸くした。
「でも、これは私たちしか映ってな・・」
「「「見る!」」」
潔子先輩の言葉を大地先輩たちが力強く遮った
3人の声が綺麗に重なる
きっとこの勢いは止まらなそうだ。
「・・分かった。じゃあ見よう」
タブレットを持った潔子先輩をワクワクしたみんなが囲む。
「(このメンバーともっともっと一緒に居たいな・・・)」
楽しそうな先輩たちを見てそう思った。
