第74章 春高1日目夜 『気付き』
山口side
烏養コーチたちが作ってくれた動画が流れる
何度再生ボタンを押したかもう分からない
ツッキーは走りに行く日向たちと一緒に外に出て行った。
部屋には勉強している先輩たちもいるから、邪魔にならないようにイヤホン付ける。
選手たちのかっこいいプレーに合わせて曲が流れた
各々の好みに合わせて編集してくれてるらしい!
「(みんなカッコいいよな!ずっと見てられる)」
本当に細かいところまで出来てる。
それに・・・
「(最初見てるときは分からなかったけど、うん!やっぱり聞こえる!)」
何度目かの再生で気づいたことがあった
「(あ・・・これは嶋田さんだ!)」
流れるBGMの後ろでかすかに聞こてくる
動画を撮影している人たちの声
”忠ーーー!決めろよ”
”やるなぁー!”
”さすがお前の弟子!”
”まぁーな!”
試合中だとコートに届く前にかき消されてしまう声が、動画だとダイレクトに届いた
「(嬉しいな。こんな風に応援してくれてるんだ)」
声だけしか聞こえてないのに、嶋田さんの顔が浮かんでくる。
「(サーブ決まった時とかすっげぇ喜んでくれてるんだろうな)」
”山口くん!1本ナイッサー!”
”すごいです!いまの本当にすごいです!”
続けて聞こえてきた声に思わず顔を緩める。声に集中するために目を閉じた。
「(これは一ノ瀬ちゃんだ・・・)」
自分のシーンを何度も繰り返し再生した
「(試合中ずっとこうやって応援してくれてるんだ・・・俺たちと一緒に戦ってくれてる)」
コートにいるときは気づけなかったこと。すごくありがたい存在
体育座りで近くなったヒザにおでこをギュッと押し付けた
「(この声援に応えたい!)」
「・い!・・ちょっと!山口!?」
突然体を揺さぶられて驚く
いつの間に戻ってきたんだろう?目の前にはツッキーがいた。
「まだ動画見てるの?お風呂、僕たちの番だって」
「あっ、うん!いま準備する!」
日向と影山は競うように風呂場へ走っていった
さっきまで走っていたはずなのに、あの二人はどれだけ体力が余っているのだろう?
「あと何回それ見るんだよ」
「いいサーブ打てるイメージ固まるまで!何回でも!!」