第67章 進化②
しょんぼり落ち込む背中に声をかけられる
「あの二人見て落ち込んでるの?あの二人と君は違うデショ。
べつに比べなくていいんじゃない?」
隣に立つ月島くんの声はなんだか優しい。
「一ノ瀬だってずっと頑張ってる。僕は少しハイペース過ぎるくらいだって思うけど?」
「えっ・・・」
「どうせ頑張るなって言っても君はガムシャラに頑張るから止めないけど、時々は休みなよ。
あの二人は体力おかしいからさ・・・同じペースでついていける奴なんていないよ」
月島くんがバレーする日向くんたちを呆れたように見つめた。
そんな風に言ってくれたの初めてだ・・・ううん、違うか。
夏合宿の時も気にかけてくれてた!
「夏合宿の時も”ちゃんと休憩しなよ”って止められたね?」
「そうだっけ?」
そうだ!つい周りと比べてしまうのは私の悪いとこ。私は私!
「ありがとう」
「?」
お礼を言うと不思議そうな顔をする。
「頑張ってるの、見ててくれて・・・ありがとう!」
「どういたしまして」
「月島くんは?合宿はどうだった?」
「日向からイヤってほど合宿のこと聞いて知ってるデショ?」
まだ聞きたいの?って嫌そうな表情をした。
「日向くんから見た合宿の様子は沢山聞いたけど、月島くんから見た感じも聞いてみたい!」
「・・・”疲れた”」
「うん」
「・・・・・」
続きは?と言わんばかりの表情で月島くんを見る。
「ハァ~・・・」
ちょっと面倒そうにため息をついた。フフッ!勝った!
「中学生も混ざった合宿で、選ばれてきただけあるからみんな手強い。
何も考えずにプレーするとやられる。
伊達工の黄金川だってまだ経験浅いけど鉄壁のとこでセッターやってるだけあって結構思考は鋭いかな。
この先伊達工は、うちにとって厄介な相手になるかもね?
それに日向・・・勘の部分もまだあるだろうけど、かなりボールが見えてる・・と思う」
一度そこで言葉を切る。顔を見ればすごく真剣な表情をしている。
「あいつ見てると”こっちも何かしなきゃ”って気にさせられて・・・いやだ」
月島くんの視線の先には日向くんがいた。
合宿で色々刺激を受けてきたのは日向くんたちだけではないらしい。