第62章 黒い雲 ②
「私カッコよくないです・・・なんでも出来る道宮先輩に嫉妬して。
出来ない自分が悪いのに。悔しくて・・・嫌なやつです」
涙で視界が滲んでうつむいた。
今日の部活の間、私の頭の中は嫌な感情がグルグルしてた・・
「凄い人に嫉妬するなんて誰でもあるだろ?一ノ瀬だけじゃないよ。
俺だって田中や西谷に嫉妬するし、大地さんにだって嫉妬する。
出来ない自分が嫌になるし、情けないなって思うことなんてしょっちゅうだ」
「縁下先輩が?」
「・・・引いた?」
フルフルと首を振って答えた。
「周りにすごい奴多いから嫉妬してばっかだよ。カッコ悪いよな~」
悲しそうにため息をつく。
「カッコ悪いなんて思わないです!」
大きい声で力いっぱい否定したら目の前の先輩が驚いた顔をした。
「いつもそう言ってくれるな・・・ありがとう。
誰だってそういう気持ち持ってんだ。だからため込まないでたまに吐き出しなよ。俺でよかったらいつでも聞くし、清水先輩もいるだろ。
西谷がいつも言ってるけど、もっと先輩を頼っていいから」
そろそろ帰ろうか、と荷物を持って立ち上がった。
「あ、あの・・・ありがとうございました!すごく助かりました!」
「いつも助けてもらってばっかだし、たまには先輩らしいとこ見せないとな?」
「?」
縁下先輩を助けたことなんて今まであったかな?
不思議そうな顔をして見上げると、急に目の前に仁王立ちする。
あれ?なんか怒ってる・・・?
「それと!!隠れて泣くの今後は禁止だからな!!!」
「は、はいっ!もう隠れて泣きません!!!」
遠回りになっちゃうのに家の近くまで送ってくれた
帰り道で1年生の頃の話を聞かせてくれる。
「烏養監督の練習そんなにキツかったんですか?」
「あの頃の俺にはキツかったよ。毎日”辞めたい、今日辞めるって言おう”しか考えてなかったな。
最近の一ノ瀬の顔見てたらあの頃の俺が重なった気がして。
”ちょっとヤバいかも”って思ったんだ」
「顔に出ちゃってたんですね・・・」
普通な顔してたつもりなのに、全然隠せてなかったんだ。
恥ずかしい・・・
「ちなみにスガさんも気づいてたよ」
「そんなぁ~・・・本当にポンコツ過ぎます」
頭を抱える私を見て縁下先輩がおかしそうに笑った。
「いいぞいいそ、どんどん自分出してこ」