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約束の景色

第62章 黒い雲 ②


「・・・あいつどうしたんだ?」
「力なんだって?」
「”一ノ瀬と先帰るから”って」
「なんだ?・・・もしかして何かあったのか!?」
「分からん」
「俺も行ってくる!!!」
残っていたガリガリ君を一気に口に突っ込むと西谷が駆けだそうとする。
田中もそれに続くように急いでリュックを背負った。
「待った、待った!縁下が一ノ瀬と一緒に先帰るって言ったんだろ?
心配しないで大丈夫だよ」
西谷の首根っこを掴んで菅原がやんわりと止める。
「「でも・・・」」
「縁下に任せれば大丈夫」
「「?」」


静かな体育館に二人きり
縁下先輩がくれたペットボトルを開けて一口飲んだ。
「(あったかい・・・)」
「いま清水先輩いないからマネージャーの仕事大変?」
「いえ!道宮先輩が色々手伝ってくれるので全然!」
「その割にはしんどそうな顔してる」
ペットボトル持つ手に力が入る。
こんな事言ったら怒られるかな。
「・・・全然役に立てなくて・・・いらないって言われたらどうしようって・・・」
「ハァア!?誰かにそう言われたの?」
慌てて首を横に振る。
「そうだよな。もしそんな事言う奴いたら俺が殴ってるよ」
ビックリして縁下先輩を見れば鼻水出てるって笑われた。
「そんな事言う奴、ここに居るわけないよ。
・・・一ノ瀬が今までどんだけ頑張って来たかは、近くで見てきた俺たちが一番知ってるから。
まだ出来ないこと多いのだってこれから出来るようになる。
焦らないで大丈夫だから」
コクリとうなずいて鼻をかんだ。縁下先輩の優しさが染みる。

「一ノ瀬はすごいよ。辛いのから逃げ出さずに戦ってんだ。
俺はさ・・・烏養元監督の練習きつくて、1度ここ逃げ出したんだ」
そうだったんだ・・・知らなかった。
「田中と西谷が何度も連れ戻そうとしてくれたのに嘘ついてずっと逃げ回って。
練習サボってクーラー効いた部屋でマンガ読んでアイス食って・・・
あぁ幸せだな~って思ったけどすぐ後悔に変わった。
でも1度逃げたらなかなか戻れなくて・・・そんな俺から見れば、一ノ瀬はカッコいいよ。本当にスゲェーなって思う」
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