第62章 黒い雲 ②
翌日、テキパキ動く道宮先輩を縁下先輩が止めた。
「道宮先輩、すみません。それ一ノ瀬にやらせてもらえますか?」
「えっ?」
「一ノ瀬の練習になるんで。
一ノ瀬!分からなかったり無理そうだったら言って?その時は手伝うから。だからまず自分でやってみな?」
時間かかっても大丈夫だから、そう言い残して先輩が練習に戻った。
「は、はいっ!!」
「一ノ瀬!それが出来たら次はこっちな?」
スガ先輩にも声をかけられた。
あれは昨日出来なかったやつだ!
「分かりました!」
手順はしっかり復習してきた。まずはやってみよう!
「いい返事だな。ほら、頑張れ、頑張れ!」
「菅原も縁下くんも、一ノ瀬ちゃんにちょっと厳しくない?
あれ大変だし手伝ってあげればいいのに・・・」
一連のやり取りをじーっと見ていた澤村が口を開く。
「いや、あれは・・・俺が気づかなきゃだったのに悪い事したな」
「手伝ってくるよ!」
「道宮いいんだ!一ノ瀬に任せて大丈夫だよ。
この先、後輩が入ってきた時には一ノ瀬が先輩として教えることになる。だから今は色々覚えてもらいたいんだ」
「あっ・・・・そうだね」
代わりにやってあげることだけが優しさじゃない。
一人でやらせることも後輩の為には大切だ。
「(手伝ってるつもりが余計なおせっかいになっちゃったかな)」
頑張る一ノ瀬を遠くから見守る。
「手伝わなくても大丈夫そうだね・・・じゃあもう行くね。練習がんばって!」
「色々手伝ってくれてありがとうな!助かったよ」
「ううん。こっちこそ久しぶりにバレーに関われてよかったよ。
・・・一ノ瀬ちゃん!私用事できたからこれで帰るね!人手足りないときは手伝うから、いつでも声かけて~!!」
「はい!道宮先輩ありがとうございました!」
何度もお辞儀する一ノ瀬に道宮が手を振った。