
第62章 黒い雲 ②

「今日も手伝ってくれてありがとな。これからみんなで坂ノ下商店行くけど、道宮も肉まん食べる?」
「食べる、食べる!」
大地先輩がみんなに肉まんをおごってくれると言った
西谷先輩と田中先輩が元気に駆けだしていく。
今日も最後まで手伝ってくれた道宮先輩は3年生たちと楽しそうに歩いてる。
「あのっ!私ちょっと忘れ物したんで体育館戻ります!鍵預かっていいですか?」
校門から出て少ししたところで立ち止まった。
「一人で大丈夫か?一緒に行くよ」
そう言ってくれた大地先輩に首を振る。
「大丈夫です。すぐ戻ります!」
投げるようにリュックを置いて、急いでノートを開いた。
今日の道宮先輩がやってたのはどんな動きだったか?
なんて教えてくれてたか?
自分がどうやったらそれを真似できるか?
思い出せる範囲で一気に書き出していく。
「(みんな道宮先輩に”ありがとう”って言ってたな。アドバイスしたり、難しい練習にも付き合ってた・・)」
私には出来ないことばっかだ・・・
ペンが止まった。
ノートにポタッ、ポタッって染みが出来ていく。
放課後に泣いたから今日は涙腺が緩んでる??
「(う”ぅ”~泣いてどうする!?忘れないうちにちゃんとメモして、出来るようにならなきゃ)」
そう思っていても止まらなかった。
「(もう必要ないって言われたらどうしよう。春高も潔子先輩と道宮先輩がいたほうがバレー部の為にいいんじゃない?)」
書いた文字がどんどん滲んでいく
悪い考えのほうにばかり頭が動いていった。
「(やだよ。そんなのやだ)」
「・・・熱心なのはいいけど、あんまり根を詰めると疲れるぞ?」
入口から声が聞こえてきた。
驚いて顔を上げると縁下先輩が靴を脱いで中に入ってくる。
「ほらっ、これ」
渡されたペットボトルを受け取れば温かい。
バッグを置いて隣に座った。
「すぐ戻るんじゃなかったの?」
「あ・・・えっと・・」
返事に困っているとティッシュを渡される。急だったから泣いてたの隠せなかった。
「もう出れます!すみません!」
慌てて片付けて立ち上がろうとすると腕を掴まれた
「いいよ。俺は急いでないし」
そう言うとスマホを取り出してどこかに電話をかける
「あ、田中?俺、一ノ瀬と先に帰るから。みんなにもそう伝えておいて」
ポカンとした顔で縁下先輩を見れば「ほら、これでもうゆっくりできるから」って笑った
