第60章 夏のお返し
「一ノ瀬はずっとバレーやってんの?」
「ううん。高校に入ってから日向くんたちに誘われて」
「あいつらか。影山に日向に、変な奴多いから烏野のバレー部って大変そうだよな?」
「毎日賑やかだよ」
思い出してクスクス笑うと国見くんがジッとこちらを見た。
「? どうかした?」
「あ、いや。ずいぶん楽しそうに笑うから・・・」
「日向くんと影山くん見てると飽きないんだ。二人ともいつも楽しそうにバレーするから」
「(あいつが楽しそうにバレーする姿、中学時代一度も見なかったな・・・)」
国見が中学時代の影山を思い出した。
いつも一人でバレーしてた、コート上の王様だった・・・あの頃の影山からはそんな姿、想像もできない。
隣をチラリと見れば金田一も同じことを考えていたのか、複雑な表情をしていた。
最後の試合で誰もボールを繋がなかったあの場面が、ベンチに下げられた影山の表情が・・・今でも昨日のことのように頭に浮かぶ。
”悪かったのはあいつじゃなくて、俺たちだったのかもしれない”
そんな後悔がずっと消えずに胸に残っている。
「”あいつら強いから気を抜いたら一瞬で負ける。だからもっと練習しなきゃダメだ”って言ってたよ」
そう伝えられて・・・少しだけ気持ちが軽くなったと同時に、こっちも負けてられないって思った。
「今度さ・・・烏野に行ってみようかな」
「本当!?影山くん喜ぶよ!」
「あいつが?まさか」
それはないない、って金田一が苦笑いする。
「・・・一ノ瀬って変わってるな」
小さく笑った国見を金田一が珍しそうに見る。
そんな話をしていると岩泉と及川が戻ってきた
「待たせて悪かったな。駅まで送るよ」
「はちちゃんお待たせ!」
二人のもとに駆けていく一ノ瀬の背中に国見が声をかける。
「一ノ瀬!今度さ、俺らにもそれ作ってよ!」
「形悪いけど・・・笑わない?」
ちょっと考えこむ国見。
「ごめん・・・笑うかも」
「じゃ、じゃあダメ!ヘタだからあげられない!」
慌てたようにそう言った一ノ瀬を見て国見が笑った。
「うそ。笑わないから」
「本当に?それならいいよ!上手に作れるように頑張ります!」
そう言って一ノ瀬も笑った。
三人が楽しそうに話しながら体育館を出ていく。
「お前、あーいう風に女子と話すんだな?意外かも」
「どういう風?」