第56章 調理実習
消え入りそうな声、震える両手で可愛くラッピングされた袋を渡す
「(あれ?今日って何か特別なイベントある日だったか?)」
「(いや、普通の日・・・だよな?)」
顔を見合わせる二人。代表して受け取った澤村が丁寧に包みを開いた
中を覗き込めば少し焦げたクッキーが見える。ゆっくり1つ取り出す
「なんだ。普通に美味そうなクッキーじゃないか」
そう言って口に運んだ
「うん、美味い!」
「どこが失敗なんだ?」
「形とか・・・見た目が・・」
「お菓子作れるってだけですごいと思うけどな?」
「俺も。作れって言われても無理だし」
一ノ瀬、美味いよ!と二人が笑顔で食べてくれる。
その反応に少し自信を取り戻した。
「俺たちが全部食べていいの?」
「あ!少しだけ残してほしいです。・・・渡したい人が」
モジモジと照れる一ノ瀬を見て二人が固まる。
「「(誰だ!!??)」」
旭が勇気を出して質問しようとすると・・・
「潔子先輩に食べてほしくて」
顔を更に赤くしてそう言った。
そっと包みの口を閉める。二人が菩薩のように穏やかな顔をした。
「「そっか、清水か。絶対喜ぶよ」」
放課後、部室にて
「ん??なんか甘いニオイする・・・?」
「月島たちからか?」
日向と西谷がそう言って月島と山口の周りをクンクン嗅ぎまわる
「クラスの子からお菓子もらったんだけど、それかな?」
山口がバックから可愛らしい包みを取り出した。
「「なにっ!!?」」
「女子からお菓子・・・だと!??」
田中が悔しそうに言う。
「田中~ひがむなよ?」
菅原がそう言った後、隣の澤村と旭を見た。
「なんか二人からも甘いニオイしない?」
「俺たちもお菓子もらって、な?」
「おう」
「っ!?なんだよ!お前らいつの間に!!誰から貰ったんだよ!」
菅原が二人を問い詰める。
「いや、内緒にしてほしいって言われたんだ」
「だから言えないんだ。スマンッ!」
「絶対お前らの口を割らせる!それで嫌われろ!」
「スガさん・・さっき俺に言った事と違う・・・」
「潔子先輩!これ!」
「美味しそうなニオイ。なんだろう」
そっと包みを開ける。
「ちょっと見た目が悪いんですけど・・・クッキー作ったんです!」
「私がもらっていいの?」
「ぜひ!食べてください!」
1つ口に運ぶ。
「美味しい!ありがとう!」
二人の周りがほのぼのとした空気に包まれた
