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約束の景色

第54章 決勝戦 vs白鳥沢④【東京への切符】


通路の先に明光さんの背中が見えた。
きっと月島くんが心配でまだ観客席に戻れなかったんだ。
気配に気づいてこっちを見る。
「早かったな!どうだ?大丈夫か?」
月島くんがコクリとうなずいた。
「すぐコートに戻る」

がっちり固めたテーピングに視線を移動する。
「明光さん!」
「ん?」
どうしたの?と不思議そうな顔をする明光さんの腕を急いでひっぱる。
自分の手と明光さんの手を、月島くんの右手にそっと重ねた。
「??? ・・・何?」
「頼りないかもだけど・・私たちの念込める!」
「!?ヨシッ!任せろ!」
明光さんと二人ウンウン唸りながらありったけの気持ちを込めた。
「(この試合が終わるまで無事に乗り切ってくれますように。どうかこれ以上ひどくなりませんように)」
月島くんは呆れちゃうかもしれないけど・・・どうしても何かしたくて。こんなことしか思いつかなかったんだけど。
神様どうかお願いします。
一瞬驚いた顔をしたけど、私たちのことを静かに見守ってくれた。


念を込め終わった右手をしばらく見つめる。
「(こういうの”意味ないデショ?”って思ってたけど・・・
少しくらい信じてみるのもいいかな)」
一ノ瀬たちに視線をうつす。
二人が真っすぐにこちらを見てる。
「いま、最後までコートに立っていたいって思うんだ。
こんな風に僕も思うんだって正直驚いてる。・・・この試合絶対勝つ」


月島くんの口から力強い言葉がでた。
「うん!勝ってみんなで春高に行こう!」
「蛍っ!行ってこい!!」
潔子先輩に現状を説明したあと、二人がベンチのほうへ向かうのを見送った。
「(烏野がんばれ!)」
みんなの背中にエールを送った後、明光さんと一緒に急いで観客席に向かう。
月島くんが痛めたのは小指で、それを薬指に固定した。
試合は続行できる状態だけど・・・痛いのは何も収まってない。
「(どうか最後まで戦えますように)」

階段を上る途中でふと靴を見た。
潔子先輩とお揃いのオレンジの靴紐
「(みんなで春高に行く!今そのチャンスを掴むんだ!)」
気合いを込めて、きつく結びなおす。
「一ノ瀬ちゃん俺達も急いで戻ろう!」
「はいっ!」
勢いよく階段を登って行った
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