第43章 代表決定戦! vs和久谷南 【襷】
試合中に田中先輩と接触した大地先輩は倒れたまま動かない。
「し、下に行ってきます!!!」
「一ノ瀬、澤村が脳震盪起こしてないか念のため確認してもらってこい!」
「はいっ!!!」
「俺は大丈夫だ!あとは頼むぞ?」
みんなを安心させるように大地先輩が笑った。
肩を掴んでもらい先導する。振り返ればみんなが心配そうに見ている
「(どうか後をお願いします)」
体育館を出る時、旭先輩と目が合った。
力強く拳を握ってる。”大丈夫だ、俺に任せろ!”って答えてくれてるみたいに。
脳震盪の心配はなかった。
抜けた歯の出血を止めるために、今の試合には出ず安静にしていることを言われる。
救護室に来てから大地先輩は言葉を発することなく、座ったままずっと足元を見つめていた。
早く試合に戻ることで頭がいっぱいになってしまってるのかも。
いつも周りを見てみんなを支えてくれる頼もしい背中。
だからこそ今きっと自分を責めてしまっている。
主将だから・・・・。
「(不安な時、いつも助けてもらっている。出来るか分からないけど・・・今度は私が大地先輩の不安を少しでも取り除く番だ!)」
そばにしゃがみ顔を覗き込む。
「大地先輩、試合まだ終わってないです。
今みんなが・・・仲間が次に繋げてくれています。
烏野はちゃんとみんな強いです。今は信じましょう」
弾かれたように大地先輩が顔を上げた。
コートを去る時から周りの音がなにも聞こえなくなっていた。
あいつらの不安そうな顔を見て俺は何か言ったのか?
頭の中はぐるぐると同じ言葉ばかりが浮かぶ
”ここで何をしている?早くコートに戻れ!試合はどうなった?”
握りしめた手に力が入る。
「大地先輩・・・」
そんな時、急に声が聞こえた。何度も呼んでくれてたのだろうか?
目の前に居る後輩はいつもとまるで別人に見えた。
”コートにいるあいつらを信じよう”と必死に思いを伝えている。
真剣な表情、痛いくらいに真っすぐな視線
「(あぁ・・・この子はこんな表情【かお】もするんだな)」
俺がみんなを信じないでどうするんだ?弱気になってどうする?
「今年の1年はどいつも頼もしいな・・・」
俺も負けるわけにはいかない。ここで終わりにはしない。
終わらせたくはない!
「ありがとう・・・気合入った」
一ノ瀬を見て力強く頷いた。
