第38章 遭遇
先に練習が終わったので、社会人チームに混ざって練習する月島くんの試合を見ていた。
お兄さんはよく見える場所でどうぞ、って言ってくれたけど邪魔にならないように隅っこのほうから。
社会人ともなるとボールの速さや音が違う。
腕がもげそうなくらい威力のあるボールが飛んでいく。
「(全員が旭先輩みたいだ)」
でも・・・月島くんだって負けてない!
食い入るように月島のプレーを見つめる二人。
月島がいいプレーをすれば、
「月島やるなー!」
「社会人の人たちにも負けてないですね!」
「「ナイスブロック!」」
声を上げて応援する。
一ノ瀬と西谷の元気な声が体育館に響き渡る。
「蛍、応援があるっていいな」
自分が応援されてるみたいで学生時代を思い出すよ~と兄ちゃんが嬉しそうに言う。
「応援呼んでるなんて聞いてないぞ?」
今日はボコボコにしてやるよ!と意地悪そうに笑う反対コートの赤井沢さん。アオるのが大好きな人だ。
「大人げないです」
試合終わりの休憩時間。
「・・・気になって集中できないんで帰ってください」
そっちはもう終わったんですよね?と圧をかける。
「「・・・」」
悲しそうな顔をする二人を見て心が痛む月島。
「(・・・僕が悪いやつみたいじゃん)」
子犬2匹を𠮟っている気分だ。
そんなやり取りを遠くから見て嬉しそうな月島兄。
「忠以外にも仲良くしてる人がいて良かった・・・蛍が学校に馴染んでるみたいで安心したよ」
月島くんからの「帰ってください」視線でしぶしぶ出口に向かう。
「(そっかぁ、月島くんも自主練してるんだ)」
みんな沢山頑張ってる。
「私も負けてられないです!」
「なんだ!いきなり!」
「西谷先輩!やってやりましょうー!」
「おぉ!?よくわかんねえけど、気合入ってるってことだな?
よし!やったるぞー!!」
廊下の方から聞こえてくる西谷たちの声に月島が一瞬ビクッ!とした
「やべっ!上着忘れてきた。ちょっとここで待ってろ」
廊下のベンチに座って西谷先輩を待つ。
「あれ?もう帰るの?」
そこへ飲み物を買いに来た月島くんのお兄さんがやってきた。
「あんまり見てると邪魔になっちゃうので」
「そっか。よかったらまた来てね」
「はい!」