第33章 2回目合宿 最後の夜
「(あー・・・・毎回俺の言葉でこんな素直に喜んでくれて。
本当に可愛いやつだな)」
なでていた手を頭からほほに移動させる。
「黒尾・・・さん?」
不思議そうに黒尾を見つめる一ノ瀬。
両手で一ノ瀬の顔をすっぽりと包み込んだ。
「みなちゃんは顔小さいな?」
そう言って優しく笑った。
「(な、なんだろう?黒尾さんがなんだかいつもと違う・・・)」
黒尾さんの手の温かさか、緊張してか、だんだんと顔が熱くなってくる。
「あのさ・・・」
「クロ!!これからキャプテン対抗の線香花火大会やるって!
早くこっち来て!」
息を切らせて研磨くんが走ってきた。
「・・・」
ジロリと研磨をにらめば”さっきのお返し”とばかりににらみ返してくる。
「みなも行こう?烏野のみんなが探してるよ」
早く行こう、と強めに腕を引っ張る。
「研磨もこういう事するんだな。上等だよ!」
「クロ早くして。みんなが待ってるから」
「ぜってぇ線香花火大会勝ってやる!」
「で・・・みなちゃんはどこ応援するんだ?」
「もちろん烏野です!」
「まぁ、そうなるよな」
「でも・・・」
いたずらっ子のようにヘヘっと笑う。
「内緒で音駒も応援してますから頑張ってくださいね?」
一ノ瀬の笑顔につられて二人のほほも緩む。
線香花火大会は、怒声飛び交うすさまじく白熱した勝負になった。
その後音駒の優勝で幕を閉じる。
優勝記念の集合写真を撮ることになり、また研磨くんのジャージを着させられた。
「あ、あの、私は臨時のマネージャー・・」
そう言おうとすると「いいからいいから」と背中を押されど真ん中に立たせられた。
それをみんなでギュッとなって囲む。
本当に音駒のみなさんは温かい人たちの集まりだな・・・って嬉しくなった。
部屋に戻った研磨がさっきの写真を確認すると、恐ろしい程どこにもピントが合ってない写真がフォルダに存在していた。
うっすらと分かるのは”赤いなにかの集合体”
翌日、シャッターを押した日向が朝ご飯の時に音駒の部員たちに囲まれて説教されていた。