第28章 合宿2回目 雛の成長
「(ちょっとあいつらからかってやるか・・)」
面白いことを思いついてクククと笑う。
脱いだジャージの上着をみなちゃんに渡した。たたもうとする手を止めさせる。
「ベンチにいる時は一体感出すためにそれ着て」
戸惑っている様子だったが”郷に入っては郷に従えって言うだろう?
それ夏用だから涼しいし日焼け対策になるぞ”というと納得していた。しかしいざ着てみるとブカブカ。
俺のサイズだからそりゃそうか。
・・・まぁ・・これもこれで可愛いんだけど。
研磨がサッ!と自分のジャージを渡す。
まだ少し大きいが俺のよりは合ってる。
「そっちのほうがいいよ」
満足そうに笑った。みなちゃんといる時よく笑うよな。
着替え終わるとドリンクの準備を始めた。
犬岡が一緒に水飲み場へ歩いて行く。
「一ノ瀬ちゃんがいてくれるとやっぱりいいよな。
ちょっとした事まで"これは私がやりますから、練習に時間使ってください"ってやってくれるんだぞ?
ベンチにいてくれるだけでも助かるのに、ここまでしてもらうと
”負けられない!”って気合入るよな」
横で夜久が感心する。
「やっぱりうちのマネージャーに来てほしいなぁ~だってあんなに音駒のジャージ似合ってるんだぜ?いいよなぁ!」
さっそくみなちゃんが音駒のジャージを着ている事に気付いたチビちゃんが騒ぎはじめた。ひゃっはっは。
研磨もそんなチビちゃんの反応を面白そうに見ている。
「(うん?)」
奥のほうに居たメガネくんからは冷たい視線を感じる。
「(ふーん・・・からかうと面白そうなやつもう一人みつけた)」
試合中も周りを見て率先して動いている。
分からない事があれば都度誰かに聞いていた。
それに、音駒の部員の名前を全員覚えようと努力してるみたいだ。
チラっと見えたノートには、名前の横に見た目の特徴とかメモって必死に覚えていた。
良いプレーしてベンチからみなちゃんに声かけられれば明らかに表情変わる部員たち。
試合後に研磨が「あれはこうだから・・こうしたほうがいいと思って。でも向こうがこうしてくる場合もあるし・・」
とみなちゃんに丁寧に解説していた。
チビちゃんの時もそうだが、研磨は意外と面倒見がいい。