第28章 合宿2回目 雛の成長
音駒 黒尾side
「テーピングの好みとかあったら言ってください」
自分で巻こうとすると”絶賛練習中なのでぜひ私にやらせてください!”とこちらへ走ってきて手際よく巻いていく。
GWの時とは違う一ノ瀬ちゃんに感心した。
あの頃は自信なさげにオロオロしていること多かったよなぁ。
「一ノ瀬ちゃん、なんか頼もしくなったな」
「え?」
「前に会った時よりしっかりしてる。あれから色々頑張ってるんだな」
「(黒尾さんに褒められた!大地先輩もそうだけど主将ってみんなの事本当によく見ているんだな・・・。
烏野でも積極的にみんなのテーピング巻かせてもらったし、バレーの勉強もいっぱいしてきたし。ちょっと成長してきた?よしよし!)」
目の前の一ノ瀬ちゃんの顔がパァっ!と輝く。
自分が言った一言でこんなにも喜ぶのか?と驚いたが、同時にこういうところ素直で可愛いな、とも思う。
「(前からそうだけど、いつも本当に一生懸命だよな・・・この子)」
自分の周りにいるのは男ばかりだから余計にそう感じるのかもしれない。
「みなさん、俺もテーピングお願いしていい?」
リエーフが隣に来て順番待ちをする。
「お前いま”みな”って呼んだ・・・?」
「えっ?あ、はい。だって同じ1年だし。いいよって言ってくれましたよ?」
ね?と一ノ瀬ちゃんに言う。
こいつの行動力には毎回驚かされる。
でもそうか・・・この流れで俺だって呼べるじゃん?
「じゃあ俺もみなちゃんって呼ぼうかな?」
「いいですよ」
俺のテーピングを巻き終わった後、リエーフの方を向く。
二人が楽しそうに話している。
「みな、次おれもお願い」
研磨も順番待ちの列に加わった。
「お前いつも自分でやってるだろ?」
「自分でやるの本当は苦手。だからやってもらうの」
別にいいでしょ?と目で訴えてくる。
今回の合宿では、試合の時はみなちゃんが音駒のベンチに入ってくれることになった。
烏野の連中からはかなり文句を言われたが先生同士の話し合いのもと決まったことなので、今回は俺たちも強気でいれる。