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約束の景色

第26章 もう一人の”相棒”


日向くんが今の気持ちをポツリ、ポツリと話し出す。
影山くんとぶつかったあの日からそれぞれが個別に練習を始めた。
喧嘩しているわけじゃないけど・・・二人が一緒のところは最近見れてない。
どこか寂しいなって思う。

「新しい速攻出来たらすごい武器になる!影山に頼るだけじゃなくて、おれも戦えるって証明できる!だから早く完成させたいんだ」
「うん」
「いま影山もたくさん練習してる。何やってるかは分かんないけど・・・あいつは凄え奴だから。だからおれも置いてかれない様に頑張る!でも・・・なかなか上手くいかなくて・・・」
悔しそうな、辛そうな声。
いつも見えてる部分は元気で前向きな面だけど、ずっとそんな人はいないよね。
陰で悔しい思いして、悩んで、もがいてるんだ。
「(こういう時なんて言ってあげるのがいいんだろう・・・。
いつもみんなは私の背中を押してくれるのに)」
うまい返事は思いつかなくて黙って聞くことしかできない。
「(何もしてあげられないな・・・私)」
武田先生だったらきっと素敵なこと言えるのに。


「(なんか不思議だよな・・・)」
規則的に聞こえる波の音と、時折聞こえてくる一ノ瀬の声が心地よくて、話しててちょっとずつ自分の中の不安が消えていく感じがした。
「(一緒にいると落ち着くんだ)」
いつもおれを助けてくれる人。


「1歩ずつ進んでみよう!私も出来る事手伝う!」
アドバイスは出来ないけど、日向くんと影山くんの練習なら私も手伝える!今は烏養コーチと烏養監督を信じてやってみよう!
ボーッと私の顔を見たあと、力の宿った目でうなずいた。


「(そっか。一ノ瀬もおれにとって大切な”相棒”なんだ)」


ごそごそとバックに手を突っ込むと、ニカッと笑ってボールを出す。
いつも持ち歩いてるの!?
「ここでバレーやってみよう」
私が最近ちょっとずつバレー練習してるのを日向くんも知ってる。

トスを繰り返すだけだけど、おしゃべりしながらバレーをした。
砂に足を取られてしまってかなりきつい。
転べば心配して日向くんが駆け寄り、砂だらけの私を見てこらえきれず笑う。
日向くんの笑顔につられて私も笑ってしまった。

二人で大笑いしてすぐにバレーは終わったけど、なんか良い気分転換になった気がする。
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