第26章 もう一人の”相棒”
ついに夏休みに突入!
練習がんばるみんなに武田先生、潔子先輩とおにぎりを作った。
「一ノ瀬さんのお家の漬物すごく美味しそうだね」
「おばあちゃんの手作りなんです!ぜひ食べてみてください!」
二人につまようじを渡す。
一切れ口に運んだ二人の顔がパァっと輝いた。
よし!おばあちゃんの漬物のファン増えた!
「みんな、自主練前におにぎりの差し入れ要る?」
潔子先輩の声かけのあとおにぎりを差し出せば、暑さと疲れでぐったりしていた部員たちが一気に元気を取り戻す。
「武ちゃんと女神たちから差し入れなんて、夏休み最高ー!」
「この漬物美味いな!」
「一ノ瀬のおばあちゃんのやつでしょ!すぐ分かった」
沢山作ったおにぎりもあっという間に消えていく。
「もう1個もらっていい?あと漬物も」
「あっ・・・西谷先輩が持ってるので最後」
月島くんよりも西谷先輩のほうが手を伸ばすの早かった。
「食いかけでよければまだちょっと残ってるぞ?」
「・・・要りません」
「準備できた?」
いつの間に準備終わったんだろう?もう出発できる状態の日向くんになっている。
部活のあとは日向くんの自主練のお手伝いで烏養監督のところへ行く予定だ。
「もう行く?すぐ準備するね」
「ちょっと寄り道したい場所あるんだ」
だから早く出よう!と急かされて、駆け出す日向くんの後に続いた。
どこ行くんだろう?
バスを乗り継いでやってきたのは海。
あまり人影がない。私たちの貸し切りみたいだ
「すごいね・・・」
波の音とどこまでも続く水平線。
隣を見るともう靴を脱いで裸足になってる。
「近くまで行ってみよう!」
「うん」
私も急いで靴を脱いだ。
「水冷たいね!」
「わあぁーーー!」
日向くんが急に大きな声で叫んだ。
「誰もいないからこういうことも出来ちゃうね」
二ヒヒっていたずらっ子のように笑う。
二人並んで砂浜に座った。
「実はさ、おれ中学の最初で最後の大会で影山にボロ負けしてさ。
リベンジ誓って高校きたら本人がいたんだ」
「えぇ!?そうだったの?」
「予想以上に感じ悪いし散々だったけど・・・
試合になると、あいつが考えてる事なんとなく解るっていうか・・・
初めて"友達”じゃなく、”相棒”が出来た気がしてたんだ」
”相棒”か。きっと影山くんもそんな風に思ってるんだろうなって気がする。
そういうのいいなぁ。