第26章 もう一人の”相棒”
日向くんが練習している間、周りの子たちに解説してもらう。
「あれがファーストテンポで、さっきやったのはセカンドテンポ。助走を始めるタイミングが違うんだよ」
「ファーストテンポにセカンドテンポ・・・」
年齢は私のほうが上でも、バレーに関してはみんなの方が歴が長い。
ここにいる子たちは全員バレーの先生。
覚えることがたくさんだ。
「しょうがないな!みなちゃんには俺がバレー教えてあげるよ!」
フフンと自慢げに腕を組んだ。
この子は小学生の小笠原 優くん。中学生のお兄ちゃんの大樹くんもここに通っている。
二人ともポジションがセッターだから日向くんの自主練仲間。
可愛い先生だな、と笑っていると優くんに「笑っちゃダメ!」と怒られた。
「翔くん、今日は気合入ってるね?」
可愛い応援団が来てるからかな?とからかわれて照れる日向。
「でも翔くん見るよりも、向こうでバレー講座始まっちゃってるか」
一ノ瀬を囲んだ子供たちが色々とバレーの事を教えてあげていた。
それをノートに必死にメモしている。
「取られちゃったね?」
クスクス笑うおねーさんを困った顔で日向が見る。
「それで、チビ太郎の相棒とやらはそんなに凄いのか?」
庭の野菜の収穫をしながら烏養監督が聞いた。
「影山くんですか?凄いです!実力だってもちろん凄いんですが、常に上を目指して努力する人です!」
受け取った野菜をかごに入れていく。
「ほう。繋心は天才と言っていたが、それに甘える事なく努力もするタイプか」
「日向くんと影山くんが上手くかみ合ったら、もう誰も止められないと思います。二人の速攻は本当に凄いんです!」
勢いよく立ち上がったのでかごの野菜がこぼれた。
「す、すみません・・・」
土を払ってかごに戻していく。
「それじゃあ、一度くらい応援に行かないとだな」
「!!」
パァっ!と輝いた笑顔で烏養監督を見る。
「ぜひ!!ぜひ見に来てください!!!お待ちしてます!」
「ハハッ、そこまで期待されちゃ絶対行かないとだ」
春高予選の烏野応援席は、前回よりもちょっぴり賑やかになりそうだ!