第25章 想い
山口side
「一ノ瀬、僕たちもう帰るけど」
ツッキーが一ノ瀬ちゃんに声をかける。
部活終わりは3人で帰るのが定番になっているから。
「これから影山くんの練習付き合ってく!」
「そう。じゃあお先に。お疲れさま」
「お疲れさま!」
にっこり笑って手を振った後、影山にボールだしを始める。
日向の練習もたまに見に行ってるみたいだし、忙しそう。
帰り遅くなりそうだし、一人じゃ危ないよな?
「一ノ瀬ちゃん!俺このあと嶋田さんのとこ寄ってくんだ。もし帰り遅くなるなら来てよ。途中まで送ってくから!」
「ありがとう。たぶん大丈夫だよ~」
「どうした忠?誰か来るのか?」
何度も通りを見るから嶋田さんが気になっているみたいだ。
一ノ瀬ちゃんの姿はまだ見えない。影山が送ったのかな?
「もしかしたら帰りに一ノ瀬ちゃんが寄るかもしれないんです」
「へー!一ノ瀬ちゃんも遅くまで頑張ってるんだな!」
今日のお昼休み、段ボールを抱えた一ノ瀬ちゃんと廊下で会った。
大きな段ボールで大変そうだったし急いで運ぶのを手伝う。
職員室に運ぶ間に何度か女子に声をかけられた。
その度に一ノ瀬ちゃんが少し離れたところで待っててくれる。
「ごめん!お待たせ!」
「山口くんすごいね!色々な女の子に声かけられてる」
「違うよ・・・俺じゃなくてツッキーの事質問されてるんだ」
「月島くんのこと?」
「そう。彼女いるのか?とか、どんな人が好きなのか?とか・・・」
前からこういうのあるから慣れたけど、高校入ってから更に増えた。
ツッキーの人気はここでもすごい。
「あぁ!私も聞かれたことあるな。月島くんモテそうだもんね」
隣でクスクス笑う。
一ノ瀬ちゃんもやっぱりツッキーみたいなカッコいい男が好きだよな・・・。
「でも山口くんもモテると思うよ。優しいし」
今だってほら、手伝ってくれてるしと言ってくれる。
「サーブ打つ時の真剣な表情だって、普段優しいのとギャップあるし!そういうギャップに弱い女の子多いと思う」
「!!」
思いがけない言葉にドキリとしてしまう。
「荷物持ってくれてありがとう!あとは武田先生に渡すだけだから大丈夫だよ」
職員室のドアの前で、自分が持っていた分をそっと渡した。