第3章 離れ離れの夏に
いつも通りの朝、教室で同期とふたり、担任を待つ。
いつも通りの時間に、戸を開けて入ってくる担任の後ろには、しかしながら、いつもと違って、金髪の学生を連れていた。
「喜べお前ら、転校生だ」
金髪の転校生の顔を見るなり、同期は「あっ…お前…」と、さも知り合いのように、心の声を漏らす。これが彼らだけの関係であれば、世に言うフラグというやつだったのだろう。
「元気そうで、よかった」
雅もまた、真新しい高専の制服に身を包む転校生に、見覚えがある。
「その節はお世話になったっス!新田明っス!よろしくお願いします!」
ブンッと音が聞こえそうな程、元気に頭を下げる彼女に、同期は「俺、猪野琢真!」と、こちらも元気に返した。雅も続けて名乗る。
「五条雅です」
横から聞こえた「いよっ!エリート!」という片腹痛い合いの手を黙殺して、雅は新田の弟の容体を聞いた。「無視だよ、ひでぇな」とごねる猪野の肩を、「お前が悪い」と担任が叩く。
「元気っス!!おふたりのお陰で後遺症もなく、先週退院しました。私も、みなさんみたいに、人の役に立ちたいっス!!」
眩しいなと、雅は思った。
それは猪野も同じようで、彼は物理的に目を細めていた。名は体を現すというが、天性の明るさなのだろう。「仲良くやれよ」と担任は猪野の肩を、もう一度叩いた。