第2章 何度も夏を繰り返し
触れる雅の指先に、干からびていた心が潤う。もっと、と求める渇望に、その手を捉えた。
つか、まえ、た
相変わらず子ども扱いかと、雅の手を頬に当てる。悪戯心が芽生える程の、油断しきった雅の表情に、棘は手を伸ばした。夜に紛れて曖昧になる彼女と闇の境目に触れる。指の間をすり抜ける髪を梳いて、その肌を撫でた。
暑さで溶けたように、雅は笑う。とろとろになった美味しそうな唇から、聞き捨てならない言葉が溢れ落ちた。
「このまま時間が止まればいいのに」
幸せだなあと蕩ける雅に、棘の忍耐も限界を迎えた。彼女はどうして時間を止めたいと言っているのだろう。棘は、もっと、時間を進めたい。子ども扱いは、もう嫌だ。
「動くな」
突然の呪言に、雅はただ驚く。驚いているだけなのを良いことに、彼女の無防備な身体に覆い被さり、押さえつける。
いつからだろう。雅を組み敷きたいという願望を抱いたのは。
実際にそれを叶えたところで、結局は満足できない。もっと、と次の欲望が湧き出るだけだった。キスしたい。触れたい。めちゃくちゃにしたい。
胸の奥が熱くて、燃えそうだった。唇を食むようにキスをすると、口から心臓が飛び出しそうだった。全身がおかしくなったかと思う程に脈打って、身体が言うことを聞かない。
へなへなと雅の胸元に額を落として倒れ込むと、彼女の香りがした。どちらのものか分からない鼓動の早さに、棘は声も出さずに笑う。
少しは思い知ればいい。隙だらけの雅にどんな目を向けていたのか、もう知らなかったとは言わせない。