第1章 それは心からの憂心
「そんなことないよ。べリアンの気持ちはとても嬉しいよ。でも、今回だけは私の為じゃなくて皆の為に頑張ってね?」
「はい、畏まりました。必ず、今度の舞踏会では主様には皆の素晴らしい姿をお見せできるように頑張ります。」
背筋を伸ばし、やっと柔らかな笑顔を浮かべたベリアンに、内心とてもほっとした私は、これで何とか彼を休ませる計画を進められそうだと胸を撫で下ろした。
「うん、納得してくれてありがとう、べリアン。その間の主様担当はハウレス君に任せようかと思っているのだけれど、べリアンはどう思う?」
「ハウレスくんを主様担当に、ですか……確かに、彼は信頼できますし、細かいことにも気が利くとてもいい執事です。問題はないかと思います。」
「そう、べリアンがそういうのなら安心だね。今度、ハウレスに舞踏会が終わるまでの間の主様担当の引継ぎをしておいてもらえるかな?」
ルカスはハウレスに担当を変えることを直接的ベリアンに最終確認という許可取りをしてから決めるようだ。確かに、その方が何かとスムーズだし、ベリアン自身も納得してくれるだろう。
「畏まりました。では、主様担当をその間変わってもらう件も私からハウレスくんにお話し致します。」
「いいのかい?」
「はい。それに、私の口から直接ハウレスくんにお話しした方が、何かといいかと思いまして。」
「……なるほどね。わかった、それじゃあ頼むよ。何かあったら私に言って欲しいな。それじゃあ、主様、べリアン、またね。」
にこりと笑ったベリアンに、ルカスは一瞬だけ間を置いたが、すぐにその言葉を承諾した。
そうして部屋に残った私とベリアンは、いつものようにロノの作ってくれた新しいお茶菓子と、それに合わせたベリアンの紅茶を楽しむのだった。