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one-of-a-kind【aknk】

第3章 それは悲喜交々とした恋の歌



ドクン、ドクンと騒ぐ鼓動が煩くて、でもそれが決して不快だとは感じなかった。それはきっと、目の前の彼も同じようにその胸を高鳴らせてくれているであろうと思えたから。

「あのね……私ね、ベリアン…貴方が好き。一番好き。」

「あ、るじ…さま……」

まるで、息の仕方さえ忘れてしまったのではと思える程に固まっていたベリアンが、その震える唇を開いた。

私はすぐに、続く言葉を口にする。
だって、貴方、こんなにも勇気を振り絞って言った私の言葉を、今にも否定しそうだったもの。

「ねぇ、教えて。ベリアンは?」

「、……っ、主様……そんな、嘘です、こんなこと……」

「嘘なんかじゃない。ねぇベリアン、……すき、好きよ。貴方が好きなの。本当だよ、ベリアンだけだよ……。」

それでも信じられないと口にした彼の言葉を、真正面から否定する。今更、この想いが偽物だなんて言わせない。

「主様っ、あぁ……こんな事が、あるだなんて…。」

揺れる瞳が、今にも泣きそうな瞳が、本当に信じられないと訴えながらも、その中にはしっかりと私が写っていた。震える手が、私の頬へ触れた。

「っ……、主様……私も、お慕いしておりました。ずっと、ずっとです……初めて御逢いしたあの瞬間から、私はずっと主様に心奪われていたのです。それが、まさか……あぁ、主様、…様……」

「あぁ、嬉しい。ベリアン……」

あの泣きそうな顔で私を見ていた彼はもういなかった。いや、寧ろ今こそ、その潤んだ瞳から暖かな雫が溢れ落ちてしまいそうでもあった。
私の背に回された腕に応えるように、その大きな燕尾の背広へと私も腕を伸ばす。ドクンドクンと高鳴る鼓動が重なりあって、なんだかとっても擽ったくて。でも本当に嬉しくて、私はしっかりと彼の存在を確かめた。
ゆっくりと息を吐き、そして恍惚とした溜息を吐いたべリアンが、ゆっくりと、今この瞬間を確かめるかのようにまるで自問するかのように言う。
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