第1章 それは心からの憂心
「そ、そうだったんだ……べリアンがね、たまに、私担当を、他の執事に変える予定はあるのか、とか、自分以上に信頼してる執事はいるのか、とか聞いてくることがあるの。なんでそんなことを聞くんだろうって思ってたんだけど、そういう事だったんだ…。」
「そうだね。それだけべリアンは必死だし、今の主様担当というポジションを誰かに取られたくないんだろう。でも、さすがにちょっと頑張り過ぎているよ。私は、この屋敷の執事達の担当医でもあるから、今のべリアンを放っておく訳にはいかないんだ。」
「うん……ありがとう、ルカス。じゃあ、その間の担当はどうしようかな。いっそムーだけにしちゃう?」
「うーん、それはさすがに難しいかな……じゃあ、ハウレスに頼もうか。彼ならマナーレッスンはもう必要ないし、若い執事達の訓練の時間がその間減るだろうから、べリアンも、皆も納得する筈だ。」
なるほど、確かに。今回の計画からすると、彼が一番の適任かもしれない。何よりハウレスは頼もしくてこういう時に真っ先に頼れる執事のうちの一人だ。
「じゃあ、そうしよう。べリアンには私から言っておくよ。主様も、もう私から相談を受けていたとべリアンには言っていい。少し嫌がるかもしれないから、主様からもべリアンに一声かけてもらってもいいかな?そうすれば、彼も断れない筈だよ。」
「うん、ありがとう、ルカス。本当に助かったよ……これで、ベリアンが少し楽になってくれたら良いんだけど…。」
「このくらい、当然だよ。大丈夫、彼は賢い人だから、上手く折り合いを付けてくれると思うよ。」
そう言ったルカスは、安心したような、けれども少しだけ寂しそうな瞳で笑って見せた。