第1章 それは心からの憂心
「いい案かもしれないけど、べリアンの仕事が増えちゃうんじゃない?」
「大丈夫だよ。決まった時間、決まった人数をスケジューリングして指導する。やること自体は今までと然程変わらないし、私もフォローに入る。本当はミヤジに入らせるべきだろうけど、これは私と主様の二人の計画だからね。ミヤジはラト君に付いて貰おうかな。あと、各々の目標や進捗具合は本人たちに考えさせるようにすれば、べリアンの仕事はかなり減るし、それに、本人たちが自分の意思で成長してくれるだろうから、一石二鳥だと思うんだ。」
ベリアンの件だけでなく、他の執事達全体にもとても良い機会となる完璧な計画に思わず拍手した。
やっぱり、先ずはルカスに相談して良かったと思ったと同時に、その間の私担当の執事を頼めないかと考えた。
「なるほど!さすがルカス!とてもいい案だよ。あ、でも、その間の私担当をルカスに頼めたらなって思ってたんだけど……だめかな?」
「え?私に?……うーん、それはとても魅力的な提案だけれども、べリアンを主様担当から外させる手前、同じ指導役を買って出ている立場の私が主様担当の席を奪ってしまうのはまずいな。」
然程深く考えず、ルカスが隣に居てくれれば、どういう状況か等と相談がしやすいと考えたのだが、思いの外頼まれた当人は深刻そうな表情で腕を組んだ。
「え?奪うなんてそんな……。」
「いや、そうだよ?主様は知らないだろうけれど、皆主様担当になりたくて仕方がないんだ。前は皆と親しくなりたいからと、全員を交代制で担当にしていたよね?あの時、全員がもっと主様担当を続けたかったと言っていたんだからね。それが、何時しかずっとべリアンが主様担当になって、執事の皆は本当はとても羨ましく思っているんだ。勿論、私もね……だから尚更、べリアンは主様担当でいられることに誇りを持っているし、皆から不平を買わないよう、このまま主様担当を続けられるようにと、寝る間も惜しんで頑張っていたんだ。」
真剣な表情で語るルカスの言葉で、私の知らなかったこの屋敷を巡る彼等の想いを知った。勿論、ベリアンがそこまでして頑張ろうとする理由も。