第2章 それは請い願った帰り花
「じゃ、じゃあ折角だから、少しだけお願いしようかな……?」
少しだけでいいからね、と念を押してみたが、大丈夫だろうかと心配になる。
けれども私が思っていたよりも、ラトのマッサージは上手だった。ミヤジ式マッサージと言うべきだろうか、少しストレッチにも近いかもしれない動きがある。
「主様、痛くはありませんか?……ふむ、フルーレも細いですが、主様は比べられないくらい細いですね。これでは簡単に壊れてしまいます。」
心配です…。と言うラトに、やはりこの子は変わっているなと思いながらその表現に苦笑いする。
しかし、そんな呑気にしていられるのも束の間、ラトのポジションが変わってきた。
「ラ、ラト?あの、そんなところまでしてくれなくて大丈夫だよ、?」
腕から始まって、今は膝下を中心にマッサージしてくれていたラトが、膝上から太腿までに触れてきた。
「おや?ダンスなのですから、足は解さないと駄目ですよ、主様。それに、関節は特に念入りに解すといいとミヤジ先生も言ってました。」
「い、いや、それは間違ってはいないだろうけど、でも……、!!」
そう言って脚の付け根に触れたラトの手に、本気で止めないと色々とまずいと焦る。しかし私にはこの場から逃げることなど、ましてやラトから逃げるなんて考えただけで不可能だとしか思えない。
待って待ってとラトの胸を押そうとするも上半身は後ろに倒れていて、この体重を支えている手を外そうものならそのままベッドに倒れ込むだろう。それもまずい。そしてマッサージするのが今の私にとって良いことだと信じて疑わないラトは私の静止の声なんて聞こえてはいない。要するに今の私に逃げ場など本当に存在しない。
ああ、こんなことになるならラトのマッサージを受け入れるべきでなかったと後悔するも時すでに遅しとはこのことか。
生憎今の格好はゆったりとしたワンピースというかなりラフなものである。
捲り上がるスカートに焦りは募る。ニコニコしてどうですか?なんて聞いてくるがどうもこうもない。私が一人ほぼ完全にパニックに陥ったところで、何故か急にラトが離れた。