第2章 それは請い願った帰り花
「っ、大丈夫ですか?」
大丈夫か、大丈夫じゃないかと言われると、大丈夫ではないと答えたい。だって私は思い切り彼の胸の中に飛び込む形で倒れ込んだのだから。いや、そんなことよりもベリアンは大丈夫なのか。二人分の体重の衝撃を諸に受けたのだから。
私は焦ってベリアンの上から逃げるように退いた。否、退こうとした。
「いけません、主様。急に動いては、足を挫いているかもしれませんから。」
腕を掴まれ、方向を見失った力の行き先が戻ってきては更に体勢を崩す。
私は一体、何をしているんだ。
この前と言い、今日と言い、こんなふざけた事が立て続けにあっていい筈がない。そう思いながらも、崩れる体に咄嗟に抱き着くようにしてしがみ付いたその体勢から動けない。
「……あ、あの、主様…確かに、動いてはいけないとは、申し上げましたが……」
この体勢は、さすがに……
そう言ったべリアンの体が硬直している。
この前自分から私を抱き締めてきた男が、今更何を言うんだと悪態を吐きたくなったが、そういう私は寧ろパニックを通り越して思考こそいっそ冷静だ。
確かに、べリアンを跨ぐようにして対面で座り込んだままなのは流石に、色々とまずい。
「…っ、本当に、いけません。主様。……これ以上は、私も、耐えられるかどうか。」
耳元で聞こえる、べリアンの声にびくりとした。
「ご、ごめ……そうだよね、あの、重いよね!ごめんね!」
再度焦って退こうとする私を、べリアンは今回は引き留めることはしなかった代わりに、少しうずくまって顔を腕で隠していた。
大丈夫かと様子を伺うと、焦った様子で立ち上がる。すぐに私の体の状態を確認して、何ともないということが分かればそのまま椅子に座らされた。
「もう少し、準備運動をしてから行うべきでした……申し訳御座いません。」
落ち着かない様子でそう言うべリアンは、少し俯いて先程から私と視線を合わせようとしないどころか、顔を逸らしたままである。
やっぱり、受け止めた時にどこか痛めたのだろうか。