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one-of-a-kind【aknk】

第2章 それは請い願った帰り花



しかし、久々に口にする、ベリアンの紅茶だ。乾いた喉を潤し、豊かな香りが私の心を癒してくれる。
あぁ、やはりベリアンの紅茶が一番美味しいと、ほっと息を吐く。勿論、ハウレスの入れた紅茶が美味しくないだとか、そういうことを言っているのではない。ただ、やはり違うのだ。
そういえば、こうしてゆっくりベリアンの紅茶を飲むのは久しぶりだなと気が付く。

お茶菓子に手を伸ばそうかなと思うと、ベリアンがすぐに私の求めていたものをお皿に分けて差し出してくれる。紅茶のおかわりも、すぐに注がれる。
ふとベリアンの方を見れば、何も言葉など発してはいないのだと言うのに、差し出される布巾を手に取った。

この感じ、久し振りだ。

休憩もそこそこに、再度ダンスの練習をすれば、私が止まって、やり直したい部分を言うまでもなく、リズムを取って進めてくれる。アイコンタクトすら必要の無いくらい。

それはベリアンにしか出来ない、私と彼の阿吽の呼吸。
日常の些細な事、全てにおいて私の言わんとする事を理解してくれる。それはあまりにも、心地よい。

「主様……最後に、少し合わせてみましょうか。」

体もリズムを思い出し、感覚も戻ってきた丁度良いタイミングだろう。
柔らかに微笑んで、あまりにも自然に手を差し出すベリアンは、とても穏やかだ。私が久々に彼が隣にいる、その心地よさを感じているように、彼も何かを感じてくれているのだろうか。
私はそんな小さな期待を胸に抱くと、落ち着いてきた鼓動がまた少し騒ぎ始めるのを感じた。

手を取って、向かい合って、ポジションを確認すると私の背にベリアンの腕が回る。流れる音楽に合わせ、どちらと言わず最初の一歩を踏み出した。
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