• テキストサイズ

one-of-a-kind【aknk】

第2章 それは請い願った帰り花


コツコツと、靴を鳴らせて近付いてくるベリアンは真っ直ぐに私を見ると、そっと手を取った。そうしてベリアンが目の前に立った時、私はやっとその表情を認識したのだ。この人は本当に、何て嬉しそうな顔を私に向けるのだろうかと思うと、主担当から外していたこの期間を、少し悔いた。
そんな私の気持ちを知ってか、ベリアンはゆっくりと、愛おしそうに私の手を包むのだ。滑らかな手袋越しに感じる、整った長い指。大きくて、私の手なんて簡単に包み込まれてしまう。いつも、ずっと隣で私を支えてくれていた手だ。

「ぁあ、やっと……貴女様の隣にいられる。」

ベリアンは私の手に愛おしそうに頬に寄せ、そしてあろうことか、指先に口付けて見せた。

まさか、急にそんなことをするだなんて思ってもいなかった私は、驚いて動くことが出来ない。だって、ベリアンはいつも私の手を握る時は必ず断りを入れてきたし、こんな、例え指先でさえ唇を寄せる等ということはしたことがなかった。
だから、何も出来なかったし、何も言えなかった。だが、指先に触れた柔らかな感触に、思わずびくりと手を引いてしまった。ベリアンは特に気にした様子はなく、寧ろ私のその反応を楽しんでいるかのようですらあった。いつもと明らかに違う、ベリアンの雰囲気にどくどくと心拍数が高まっていくのを感じる。不意に目が合って、自分がどんな顔をしているのかすら分からないまま、その視線を外せずにいればフッと微笑まれた。

「、……申し訳御座いません、主様。出過ぎた真似を致しました。どうかお許しください……ですが、私はこうしてまた主様との時間が過ごせることが、嬉しくて、仕方がないのです。」

そう言ってほんのりと頬を赤らめて笑うベリアンは、相変わらず嬉しそうに目を細めている。

「さて、レッスンを始めましょう、主様。」

/ 52ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp