第2章 それは請い願った帰り花
「すみません、気のせいかもしれませんが、どこか、上の空のように感じるんですよね。オレもルカスさんに言われてなんとなく感じるようになったのですが、何か他の事を考えているような時が多いような。勿論、ベリアンさんの事ですから、指導中に無駄なこと等考えてはないと思うのですが。」
「そっか。」
ちゃんと休めていれば良いんだけど。そう思いながら口にしたガトーショコラはいつもより少し苦かった。
「あ、そうだ。今度の舞踏会では主様も踊って欲しいとグロバナー家より伝達があったのですが、如何致しましょう?勿論、難しいのなら断っても構わないと言ってくれているので、強制というわけでは無いようですが…。」
ハウレスの言葉にハッとした。全然意識していなかったが、そうだ。私も何も準備せずに舞踏会当日を迎えること等あり得ないに決まっている。
正直自信はないが、皆がこれだけ頑張っている中、私だけ断るだなんて事出来る筈がない。
「じ、自信はないけど……グロバナー家直々に言われてるとなると、出た方が皆の為にもなるよね。私、やってみる。」
「さすが主様。ご立派です。ですが、無理はなさらずに。では、オレの方からルカスさんへお伝えして、主様のダンスのレッスン等どのように進めるか相談しておきますね。」
よろしくと、笑い掛けると爽やかな笑顔を返される。
これは、真剣に頑張らないといけないなと少し気持ちを引き締めながら、カップに残った紅茶を飲み干した。