第2章 それは請い願った帰り花
「あぁ、丁度ハウレス君が戻ってきたね。それでは主様、私は自分の仕事に戻りますね。」
「ぁ、ルカス……。」
待ってくれとも言えずに、ぽつん、とまるで取り残されたかのような、伸ばしかけた手の行き場にどうしようと動けぬままでいれば、ハウレスが心配そうに此方を見ていた。
「えっと、……呼んできましょうか?オレの脚なら今ならまだ間に合うかと。」
いや、何でもないのだと答えれば、ハウレスはすぐに切り替えて仕事を始めた。
最初はどこか危なげな様子もあったが、今ではアフタヌーンティーの用意も完璧にこなすようになったハウレスに感心する。こうして見ていると、盛り付け等は綺麗に出来るのだなぁと、並べられていくスコーンとガトーショコラを眺める。勿論、全てロノ特製なので味の保証はバッチリだ。
アールグレイのブレンドティーを飲みながら最近のみんなの様子を聞く。
「今まで見たこと無いくらいに、皆良くやってます。ラムリの成長が特に際立ってますね。やはりルカスさんが指導役にまわっているからでしょうか。ラトも、ミヤジさんが着きっきりで見てくれているので随分とマシになりました。」
「そっか。それなら良かった。……ねぇ、あの、ベリアンの様子はどう?」
「ベリアンさんは……確かにいつも以上に指導への意気込みを感じますが、そこまで張り詰めた様子というわけではなさそうです。寧ろ、なんといいますか……」
少し、何か引っ掛かる様子で考え込んだハウレスに、思わずに何かあったのかとその言葉の先を急かした。