第1章 プロローグ
夏油side
ただ心配なのは、どんどん可愛くなっていく楓の容姿だ。元々可愛いとは思っていたが、年齢を重ねるごとに際立ってきた。引き取った頃は痩せ細っていたが、食事を摂れるようになってからは別人のようだった。父はイギリス人で母は日本人らしく、色白で色素の薄い髪。大きなブラウンの目、ぷっくりとした唇。
父親とはこんな気持ちなんだろうか。大切に大切に育ててきた娘が自分以外の誰かに愛し愛されるという気持ちは。
以前、硝子に相談したことがあったらしい。
“人を好きになるってどんな気持ちなの?”
“付き合うってなに?”
ついに告白されたり、彼氏ができたのかと菜々子や美々子と楓抜きの家族会議をした。結局、そーゆーことではなかったので安心したのだが。
悟曰く、
“まったく…恵は楓の前だとカッコつけるんだから”
と言っていたから、てっきり恵だと思った。一度そう思うと見る目が変わってしまい、より強くなって楓を守って欲しいと思うようになった。つい厳しくあたるようになってしまうこともあり、都度反省している。