第2章 入学
夏油side
任務が終わり、高専に戻って来るとグラウンドから声がしたため見に行ってみると、悟が楓を抱きしめているのが見えた。
思わず駆け寄ろうとしたが、悟も私に気がついていてやってることだろう。少し様子を見てみるか。
すると楓が私の帰る日を尋ねていた。
気にしてくれているのは嬉しいが…今の状況をおかしいと思ってくれよ。恵が気がついて2人に声をかけようと口を開きかけたところで、人差し指を立てて口元に持っていく。口を噤んで青ざめた表情の恵。
『違います!傑さんです!』
あぁ嬉しいね。心の中は違っても、口では私に会いたいと思ってくれてる。でもその前に、悟に抱きしめられていただろう?保護者としては一言物申したいね。そもそも、公共の場で交際してない男女がイチャつくなど言語道断!いつものように少しだけ小言を言うつもりが止まらない。するといたずらっ子のような表情で悟とやり取りをする楓。それでバレないと思っているのか?
2人まとめて指導しなくては…
だけど今日は楓の喜ぶ顔が見たい。
家族の分だけピアスをしたい、私とお揃いにしたいと小さな頃からずっとねだられていた。割と何でも好きなようにやらせてきたが、小学生のうちに身体に穴を開けることに少なからず抵抗があったため、高校生になったらと約束をした。自分は中学から開けていたけど、女の子となると…彼女の言う“家族”とはどこまでの範囲なんだろうか。
悟や恵、津美紀も含まれているのか…そうすると、耳が穴だらけになってしまう。私の希望も込めて3つのピアッサーを手渡し、穴が安定したら付けられるようにピアスもプレゼントした。
菜々子も美々子も離れて暮らしていても、私たちの家族だと。
すぐにプレゼントしたピアスに付け替えようとする楓を止めると、不貞腐れてしまった。
しばらく見つめ合い、諦めたようにため息をついた楓。
あまりにも悲しそうだったので、つい甘やかしてしまう。
傑「毎日私が膿んでないかを確認して、いいと思ったらにしようか」
毎日会う口実ができた。
今までは割と顔を合わせる機会も多かったが、呪術師となれば別だ。君の安否も含めて確認したい。悪い虫がついていないかも…