第2章 入学
あれ?傑さん、ちょっと嬉しそう。
傑「なぜ憂太と比べられるんだ。私に会いたいのは当然だろ。家族なんだから」
あっ…そう、だよね。家族だし。
気が付かれないように、表情を変えないように。
『傑さんに会いたかったです。いつ帰ってくるのかなって』
そういう話をしてたの。
傑さんに会いたかった。見上げながらそう言うと、抱きしめてくれた。いつもは永遠に続くお説教の後だけど、今日は割と早かった。
頭を撫でられながらため息を吐かれる。
傑「あまり可愛いことをしないでくれ。心配だから悟には…いや、男には気をつけるんだよ?楓は可愛いんだから。」
急にどうしたの?傑さんらしくない。
これは何かあるな?
『…どうしたの?傑さん。いつもと違う…』
傑「そう?」
すっごい笑顔だけど…なにか隠し事してるのかな?
知らないふりはできるけど、聞いて欲しそうな表情だから…敢えて聞いてみる。
『なにか隠し事?』
傑「楓には隠し事できないね?」
そう言って、ポケットから出したものを手渡された。
傑「高校生になったらって約束だったからね?」
わぁ♡ピアスだ!
それにピアッサーも!
これ、ブランドものだけど…高校生がつけるような値段のものじゃないことくらい、私もわかる。
傑「本当はちゃんと病院で開けて欲しかったんだけど、行く時間もないだろうから、私が責任を持って開けてあげるからね。
だけど、ちゃんと毎日消毒したり、膿んでないか確認するんだよ?」
本当に心配性なんだから…
『もう高校生なんだから大丈夫です!ありがとうございます!
ね、傑さん!今開けて!』
やっとお揃いになれる!
ウキウキしながらお願いすると、ダメだと言われた。眉を下げて理由を聞くと、冷やしてから開けた方が痛みが少ないからだそう。放課後に医務室で開けてもらえることになった。そもそも、今はまだ授業中だった。
傑「で、今日の体術訓練はどんな感じだったの?」
笑顔で聞かれて心臓が跳ねる。
胸を張って言える内容ではないから…
事細かに説明すると、悟さんと同じようなアドバイスをされた。
相手を瞬時に観察し、予測を立てる。
でも予測が全てではないから、頼りすぎないように。
そして柔軟性とスピードアップ。
やることはたくさん。