第2章 入学
放課後に医務室へ行くと、硝子さんと傑さんがコーヒーを飲みながら待っていた。
『お待たせしました!さっ!傑さんやって♪』
硝「気が早いな。ちゃんと冷やさないと痛いぞ?身体に穴が開くんだから。」
怖い言い方をされても、傑さんとお揃いになる方が嬉しいもん。痛みなんてきっと一瞬だし。
だけどお医者さんの言うことには素直に従って、保冷剤で耳を冷やす。
ファーストピアスにしては高価すぎるピアスを眺めながら、今日の体術訓練についての反省をする。
予測を立てるのが本当に難しい。相手の動きやクセを見抜くなんて経験値以外に磨く術があるのか…
傑「何言ってるんだ?楓は人を観察して気持ちを予測するのが得意じゃないか。相手のしてほしいことを先回りして準備したり友だちの気持ちに寄り添うのと同じだよ?」
うーん…それはそうかもしれないけど…
それとこれとは違う気もする…
傑「私の変化にも、いつも1番に気がついてくれていただろう?菜々子や美々子もすごいと言っていたんだ。だから自信を持っていいよ?」
ななちゃんとみみちゃんに会いたいなぁ…
毎日傑さんのかっこいいところを言い合ってたなぁ…
そんな思いに浸っていると保冷剤を外され、ピアスを開ける準備に取り掛かる。
鏡で開ける場所を確認して、いざ!
バチンッという音とともに、キラキラと光っているピアスが耳に付いている。痛みはなかったけど、音に驚いた。
反対側も同じように開け、左耳には2つ。私の大切な家族と同じ数だけ開けると決めていた。
さっそく傑さんからもらったピアスに付け替えようとすると、
傑「まだだめだよ。穴が安定するまではこのままにしておいて。」
『えぇっ!さっきもらったのに付け替えたいです!』
せっかくもらったのに!
ムッとしながら伝えると、
傑「久しぶりのわがままだね?だけど、身体のことだからね、こればっかりは譲れないな」
こーゆー時は本当にわがまま聞いてもらえないから、ため息をついて諦めた。
『じゃあいつになったらいいの?』
傑「毎日私が膿んでないかを確認して、いいと思ったらにしようか」
約束をして破ったことはない。
念押しして医務室をでた。
ピアスの穴が開いたことには変わりがないから、思わずスキップしそうなほど。少しだけじんじんと痛むけれど、嬉しい痛みだから我慢できた。