第2章 入学
夏油side
話の流れから、また悟が楓の婚約者だと触れ回っている。
お父様が許してくれない、だと?
もう楓は高校生だぞ。誕生日がくれば結婚できる年齢になる。たしかに悟は強い。だけど、今まで大切に育ててきた子をすぐに手放す気にはなれなかった。友だちとして信用している。
男としてはどうだろうか。
傑「悟。いい加減にしないか。子どもの時の話を本気にしないでくれ。楓は私が認めた相手にしか嫁にやらないんだ。君のような適当な奴には嫁に出すわけがないだろう?」
高専の時のように遊び歩いていないことは知ってる。だけどそれは忙しいというだけで、楓に本気になっているという理由にはならない。
誕生日やクリスマス等は必ず子どもにあげるような金額ではないプレゼントを持ってきていたが…それは親心だろ?
悟「でも僕、もう遊んでないの知ってるでしょ?楓だけなのに〜♡」
他に女がいないことは知ってる。
悟はわかりやすいから。
だから気がついている。
あの日楓が結婚したいと言った時からピタリと女遊びをやめたことも。
傑「苦労するのが目に見えてるのに、無理だろ…この話は終わりだ。真希、恵、準備して。」
この話を終わりにしたくて、次の手合わせを理由にした。
自慢のクラスだ。
体術は私が担当した。
真希は元々のセンスを活かしてメキメキと上達した。
現に恵も太刀打ち出来ないほどだ。
パ「で、実際どうなんだよ?悟のことが好きなのか?」
コソコソ話しているが全部聞こえてるんだよ。楓がなんと答えるのか気になり、聞き耳を立てる。
『違うんですってば…私、子どもの頃に傑さんに拾われて、悟さんと結婚したら、みんな一緒に暮らせるっていう理由で言ったんです。そしたら悟さん、未だにからかってくるんです。…まだ誰かを好きになるって感情、わからないですし…』
揶揄われてると思っているのか。
それは好都合。
それに、初めて結婚したいと言った理由がわかった。子どもの頃に聞いた時には、たしか“大好きだから”と答えたんだ。そこには、みんな大好きだから一緒にいたいという意味が込められていたのか。
健気で可愛いな。