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紫の陽だまり

第1章 紫の陽だまりを見た日


 チャイムを鳴らし、はーいと出てきてくれた背の高いぼんさん。私が訪問の理由をもう一度伝えると、何度もありがとうと言ってぼんさんは中に通してくれる。
「ゆめちゃんがいてくれて本当に助かってるよ。すぐに来てくれるもんね」
 機材を取り付けている間、ぼんさんは私の後ろでそう話しかけてきた。彼は雑談配信が多いし、人とお喋りするのが好きなような感じがする。
「はは、免許があるからってだけで使われてるだけですよ……」
 やることは決まっているので、お喋りに付き合おうとうっかり滑らせた単語に私は口をつぐむ。鋭いぼんさんは、すぐにその笑みを崩した。
「え、何、なんかあった?」
「あ、いえ、なんでも……」
 ちゃんと、大丈夫なように振る舞えるかな。
 私は手元に集中した。
「取り付けはこれで終わりました」
 もうここから去ってしまおうと私は機材から離れた。繋ぎ方に問題はない。足や手にぶつかるようなコードもないか確認し、踵を返そうとした。
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