第1章 紫の陽だまりを見た日
こうして私が、動画配信者のエンジニア担当になるとは、子どもの頃は夢にも思わなかっただろう。
女の癖に機械弄りなんかして、とおかげで私は浮世離れしていたが、このドズル社と出会い、私は思い切り「好き」を仕事に出来ることを心から誇りに思っていた。
この日までは……。
「なぁ、ゆめ、だからさ」
「ん?」
仕事帰り、約束の彼氏とのデート中、ディナーを前に切り出されたのは、人生最悪の言葉だった。
「別れてくんない?」
「……え?」
思わぬ言葉に、私は手が止まった。
「だってさ、ゆめ、女らしくないし」目の前の彼氏が淀みなく話続ける。「だってさ、女の癖に機械に強いし。俺のことも考えろって……」
「それって、どういう……」
「この前だってさ、壊れたカメラを解体してまで直して……正直? 気持ち悪いっていうか」
「だって、長く使ってもらいたくて……」
「カメラ直せない俺ってダサいじゃん。それにもっと前はさぁ……」
それ以上のことは、覚えていない。