第2章 ハンバーグ記念
「ぼんさん、この冷凍食品、もう少しで期限切れちゃいますよ?」
「あー、そうだったそうだった。自炊しようと思って買ったのに全然開けてなかった」とぼんさんもキッチンにやって来る。「冷凍していたらいつでも大丈夫と思ったけど……俺に自炊は無理だな」
「今は配達頼んだらなんでも食べられますからね」
ふふっと私が笑うと、ぼんさんもクスリと笑ってそうだなと頷いた。笑った顔がますます可愛い。私の背が低過ぎてよく見えないのが残念なところだ。
「簡単ですけど、私が準備しますよ。温めるだけで良さそうですし」
「分かった、ありがとう。頼むわ」
そしてまたリビングに戻るぼんさんを見送り、私は早速冷凍食品を解凍し始めて気づいた。
あ、ハンバーグだ。
いや、今は大丈夫。なんてことはないのだと私は何度も自分に言い聞かせて、ハンバーグの付け合せを探す。何もないから余り物の副菜を添える形となったが、大して時間もかからずにハンバーグを解凍していた電子レンジが音を鳴らす。あっという間にハンバーグの料理が完成した。
「出来ましたよ〜」
「おー、ありがとう〜」
リビングで待ってくれたぼんさんはそう言って私が持っていたお皿を受け取る。指が少しぶつかってドキドキしたけど何も言わないで置いた。
「えっと、箸ってどこですか?」
「ああ、箸はね……」
早くぼんさん宅に慣れたいなぁと思いながら、こうやって教えてもらう時間が愛おしかったり。
そうして、ようやく頂きますとハンバーグを食べようとしたが、私の箸は動かなかった。副菜だけでも食べようとするが、手が震える。
「どうしたの?」
さすがに私の様子がおかしいと思ったのか、ぼんさんがそう聞いてきた。私は答えようとしたが口だけが動いて、やっと出せた声も震えていた。
「わ、私……」
ポロリと涙が出た。ぼんさんの目の前で涙を流してしまうのはこれで何回目だろう。ごめんなさいとティッシュを探したが近くにはなく、咄嗟に私は瞼を覆うと、ぼんさんが隣に来て背中をさすってくれた。
「大丈夫大丈夫。俺は気にしてないから泣かないのよ」
どうやらぼんさんは私が食材の買い忘れをしたことで落ち込んでいると思ったみたいだ。でも今は、他人だった私たちじゃない。ぼんさんの胸に寄りかかって、私は落ち着くのを待った。