第1章 紫の陽だまりを見た日
なんてことか。私の気持ちは、周りにだだ漏れだったというのだろうか。
「ははっ、いや、多分、MENは察しがいいだけなんだわ」とぼんさんは言い、前屈みになって私の顔を覗き込んだ。「で、答えは? 今じゃなくてもいいけどね」
「私……」
自分でもびっくりするくらい声が掠れていて言葉が途切れた。急いで残りのコーヒーを飲み込むとむせてしまい、ぼんさんがまたごめんと謝りながら背中を軽く叩いてくれて、なんだか泣きそうになってきた。
「え……大丈夫?」
何も悪くないのに、怯えたような声で問いかけてくるぼんさんの言葉にどこか聞き覚えがあるなと思っていたら、あの日全てを打ち明けた時に聞いた声だと思い出してますます涙が零れた。
「えっ、ごめん、ごめんね?!」
ぼんさんは慌ててティッシュを取りに立ち上がった。私はその様子がなんだかおかしくて、ボロボロ涙を流しながら笑ったら、ぼんさんはきょとんとし、それから一緒に笑った。
「こんな私ですが、よろしくお願いします」
そう言った私の目の前でぼんさんは優しく微笑んだ。それはまるで、陽だまりのようで、色で例えるなら、そう、彼のイメージカラーである、紫がかった夕日の空のようだった。
こうして、私とぼんさんのお話は静かに始まったのである。