第10章 シーン7
裕香ちゃん、昔から私と一緒にいた裕香ちゃん。私と裕香ちゃんの最初の出会いって覚えてる? きっと覚えてないよね。
小学生の時ね、図工だったかな、私が絵の具セットを忘れて、その頃は私は誰にも何にも言えないおとなしい子だったから先生に言うのもできなくて困っていて泣いてたんだけど、その時にね裕香ちゃんが絵の具セットを貸してくれたの。2人で使おうって、それが私と裕香ちゃんとの出会い。クラスメイトだから出会ってたんだけどね、初めて裕香ちゃんが私に声を掛けてくれたの。
私はそれまで友達なんかいなくて、一人ぼっちだったんだけど、裕香ちゃんが話しかけてきて、それから私、裕香ちゃんにべったりになったよね。いつでもどこでも裕香ちゃんに付いて回って、うん、迷惑そうに思われてたのはどこかでわかってたけど、裕香ちゃんはね、私の友達なんだ、って。絵の具セットを貸してくれたのは裕香ちゃんにとって些細な事なんだろうけど、私にとってはそうじゃなかったの。嬉しかったなあ。中学でも高校でも一緒に居たよね。迷惑じゃないかなって少し思ってたけど、それよりも裕香ちゃんと一緒に居たかったんだ。