• テキストサイズ

こちら、MOB飼育係3[dzl]

第7章 ドズルクリーパー目線


 向こうから女の子が走ってきた。走ったら危ないんじゃないかと思っていたら、間もなく両親らしき人に止められてゆっくりと歩いてきた。
 まさかあんな可愛らしい人間の子どもが、危険生物コーナーの、しかも一番奥にいる僕たちクリーパーがいる棚に来るとは思わなかったので、端にある焚き火に再生のポーションを振り掛けて部屋中を蒸し風呂のような状態にする。
「こっちに行きたい!」
 黄色い声がして足音が近づいてきた。多分さっきの女の子だろうと予想したが、蒸し風呂好きのクリーパーには興味がないだろうと、僕は気にせずそこの椅子に横になった。
 僕たちクリーパーの飼育カゴは誤爆した時のために強化ガラスで出来ていた。だけど僕は蒸し風呂のためにカゴ中を曇らせていたので、さすがに僕のところにまで見に来ないだろうと思ったら、明らかに間近で女の子の声がした。
「ねぇパパ、ここはどうして真っ白なの?」
「なんでだろうなぁ」
 それから父親らしき人が店員を呼ぶ声が聞こえ、まさか僕のことなんじゃ、と身構えていたところに、天井から人間の手が入ってきて急いで隅へと逃げた。人間の手……店員が僕の焚き火を取り上げて、内側からガラスの曇りを拭き取った。
「わぁ、緑のMOBさん!」
 外側がよく見えるようになったガラスカゴの向こうには、大きな丸い目をした女の子がこちらを覗き込んできた。どうも、クリーパーです、と挨拶をしてみれば、くすくすと女の子の笑い声が返ってきた。
「ねぇ、パパ、ママ。このMOBちゃん、クリーパーって言うんだって!」
 え?
 僕は驚いた。
 見上げると、女の子の両親は冗談だとでも言うかのように微笑むばかり。もしかしなくても、女の子は僕の言葉が分かるというのだろうか。
「僕の言葉が分かるの?」
 試しに聞いてみた一言。女の子はすぐに頷いた。
「うん、そうだよ!」女の子は答えた。「ねぇねぇ、クリーパーちゃんはなんて名前なの?」
 はたから見れば、MOBに話しかける不思議な女の子と、自爆するかもしれないクリーパーとの会話。MOBの言葉は人間には伝わらないはずだから、女の子はさぞ周りから変な目で見られているのだろうと彼女の後ろにいる両親の様子を伺うと、二人とも我が子を愛でるような優しい目をするばかりで何も言ってはこない。
/ 17ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp